欧州での「プリウス」

4月 10 2014

 

スライド1

欧州でも「プリウス」はごく普通のクルマ

先週のブログでロンドンのPM2.5を取り上げましたが、久しぶりにロンドンに滞在し、これまた数年前にロンドンの新駅、新線が開通し、英国内のスピードがやや速くなったユーロスターにのってパリに移り、パリ経由で帰国しました。この数年で何度目かの欧州ですが、今回のロンドン含め、パリ、バルセロナ、ブリュッセル、ウイーン、ストックホルム、ストラスブールと、ドイツを除き訪れる都市で目につくのがプリウスです。リーマンショック、さらにトヨタ車の予期せぬ加速問題で欧州でのトヨタ車販売が落ち込み、加えて欧州ソブリン危機で欧州全体での新車販売が低迷していましたが、2012年、2013年とマーケット全体が落ち込むなかでトヨタ車の販売が回復し、その牽引役を果たしてきたのが「プリウス」を筆頭とするトヨタハイブリッド群です。その走り回っている 「プリウス」は日本からの輸入車ですが、プリウス用のハイブリッドシステム、電池パックを日本からもっていき、英国工場で現地生産を行っているのが「オーリスハイブリッド」、さらに「アクア」のハイブリッドシステム、電池パックを使いフランス工場で現地生産を行っているのが「ヤリスハイブリッド」です。これにレクサスハイブリッドを加え、欧州での販売を牽引しています。もちろん、ロンドンでの市内乗り入れ税免除など、日本同様、各国、各都市のインセンティブ、補助金の後押しもありますが、ハイブリッド車が市民権を得てきたことが町を歩き回ると実感します。その中で、ひときわ目立つのがプリウスです。日本では一時、ハイブリッドはガラパゴスカー?との記事もありましたが、日本同様に欧州でも「プリウス」がごく普通のクルマとして走り回っています。

 

初代プリウスのアメリカ導入でつくづく感じましたが、トップの英断でハイブリッド専用モデルとして出したのが効果的でした。自動車変革の先駆けとしてプリウスのネーミングが付けられ、われわれ開発陣も清水の舞台から飛び降りるようなチャレンジをしてしゃにむに生産、販売にこぎ着け、当初はなにかあれば目立ち過ぎで引くに引けないとの思いがありましたが、これが今に思うと大正解でした。クルマを見て、一目でわかることがエコカー普及の先駆けとして重要でした。日本では、あまりにも普通になりましが、アメリカ、欧州ではまだワン・オブ・ゼム、現地生産の「オーリスハイブリッド」、「ヤリスハイブリッド」の販売も伸びてきていますが、やはり存在感が大きいのが「プリウス」です。さらに最近では、日本名「プリウスα」、欧州では「プリウスv」と読んでいますがこのワゴンタイプの「プリウスv」が目立つようになってきました。

 

「プリウス」タクシーのプレゼンス大と心配事

このプリウスファミリーが目立つもう一つの理由がプリウスタクシーの存在です。さすがにロンドンではロンドンタクシーの独壇場ですが、パリを筆頭に他の都市ではプリウスタクシーが欧州車を押しのけて幅をきかせています。数年前にストックホルムではその時のタクシー登録台数NO1が二代目「プリウス」、昨年訪問したベルギーブリュッセル、スペインバルセロナでも「プリウス」タクシーの多さにびっくりさせられました。パリでも二代目「プリウス」からタクシーで使われるようになり、三代目で飛躍的に増加、最近では大きなラゲージスペースから「プリウスv」のタクシーが増加しています。今回パリのホテルから空港までのタクシーとして、ベルボーイにお願いして「プリウスV」タクシーを止めてもらいましが、客待ち行列の中にも複数台の「プリウス」を見かけるのが普通になってきました。実は、欧州大都市での「プリウス」のプレゼンスが大きくなってくるのを喜びながら、一方「プリウス」タクシーの拡大は少し心配しながら見ていました。もちろんその一つの理由は、プリウス搭載のハイブリッドシステムをタクシー用途の年十万キロ以上が当たり前の長距離走行寿命までは考えてはいなかったこと、またこれまでのタクシー用途ではとかく売れ行きの思わしくないクルマの値引きをしての販売台数稼ぎの話もないわけではなく、正直その心配をしていたことも事実です。二代目プリウスがタクシーシェアNO1を占めたストックホルムでは、インセンティブがついていること、エコイメージとランニング費用が安く商売上もメリットがあるからと聞いていましたが、三代目プリウスでここまで台数が増える背景には、台数稼ぎもあるのではと心配していました。今回また、トヨタの関係者から状況を聞きましたが、その心配は当たっておらず、インセンティブ、ガソリン代の節約以外にもブレーキパッドの減りが少なく、オイルの交換スパンも長くなる上に、故障が少ないため稼働率が高く、商売上もメリットが大きいことが拡大の理由と聞かされました。確かに、初代から回生ブレーキの採用でメカブレーキの仕様頻度は大きく下がり、通常の使い方ではほとんどブレーキパッド交換が不要になったと聞いていました。

このような声は、「プリウス」が経年車品質NO1を連続、また各地域で獲得するなど、故障が少ないことからも裏付けられています。最近では、消費者レポートのベスト・バイ中古車として「プリウス」が選ばれたのもこうした信頼性品質の高さです。

Green Car Report 2014/03/19

http://www.greencarreports.com/news/1090956_used-toyota-ford-hybrids-score-well-in-consumerreports-best-used-car-list

パリ市内からシャルル・ドゴール空港までの「プリウスv」タクシーに乗って、三代目マイナーチェンジ後であることもあってか、室内音も良く乗るコンベディーゼルタクシーよりも遙かに静か、さらに変速ショックのないなめらかでモーターアシストも加わったトルクフルな加速に、手前味噌ながらこらならプリウスが欧州で良い次世代車として認められるようになったことを実感しました。

 

普通になったプリウスの次に期待

しかし、ここまで普通になった次への期待はさらに高くなります。商売上もメリットのでるタクシー用途はいまだけの役割でしょう。昨年の東京モーターショーで展示されたように、いずれはタクシー専用のハイブリッド車が今の「プリウス」タクシーに切り替わっていくでしょう。またここまで普通になってきたら、パーソナルカーとしては次の飛躍にむかいこれまでのユーザーを引きつける何かが必要になってきます。ともするとエコ疲れを感じ始め、普通=陳腐化の道を歩みはじめた「プリウス」を、やはり先駆け「プリウス」とサプライズを与える4代目の出現を期待しています。

今回の欧州出張のさなかに、ホンダから「インサイト」に続き、「CR-Z」の欧州販売打ち切りのニュースが流れてきました。欧州でときどき「CR-Z」を見かけるだけに、販売打ち切りは残念です。ここまで普通になってきた次世代自動車としての日本ハイブリッド車の次の飛躍には、さらなるマーケットには良きライバルとの競いあいが必要です。欧州勢は、どうも政治的にも、規制対応としてもノーマル・ハイブリッドをスキップしてプラグインハイブリッドを優先させてくるようです。しかし、タクシーがエコだけではなく、経済原理から「プリウス」が増えたように、政治的、規制対応だけではユーザーの賛同は得られません。普及が遅れると低カーボンを目指した次世代車への変革が遅れることになります。

良きライバルも参入し、クリーン&グリーン(低カーボン)は当たり前の上に、クルマとしての魅力アップも果たし、ハイブリッドがさらにごくごく普通のクルマになり、そのなかでクルマそのもの商品魅力を競い合う時代になることを見届けたいと思っています。