電動化と自動運転、自動車の未来は

マツダより新型『アクセラ』の発表がありました。従来の「Skyactive」ガソリンエンジンモデルに加えて、トヨタと協力したハイブリッドモデル、「Skyactive D」ディーゼルエンジンを搭載したスポーツモデルを同時発表し、世界市場に向けたモデルとしてマツダの意気込みが感じられるラインナップとなっています。

昨年に三菱が『アウトランダーPHEV』、今年に入ってスバルが『XV ハイブリッド』、マツダがこの『アクセラ』を発売したことにより、日本の登録乗用車メーカーすべてがハイブリッドを販売することとなりました。ホンダもそれぞれ新開発のパワートレーンを搭載した『アコードハイブリッド』、『フィット ハイブリッド』を発売しており、今年行われる東京モーターショーでは、「いますぐ買える」各社のハイブリッドが展示されることになります。(海外のショーでもハイブリッドコンセプト等は展示されていますが、ボリュームゾーンに向けたハイブリッド車がここまで揃うこと無かったでしょう。)

今回は八重樫尚史が、今後ニュースなどが増えるであろう次代の自動車の方向性等について、とりとめもなく書いていこうかと思います。

共通する「電動化」の流れ

さて冒頭の『アクセラ』のニュースですが、報道をざっと眺めてみるとハイブリッド(HV)モデルがメインでその燃費30.8km/lというのが注目されているように見えます。触れたようにマツダ初のHVであり、また国内の販売台数の上位が『アクア』『プリウス』『フィット』となったようにHVが占めているため、こうした見出しが付けられたのでしょう。

以前このブログでも「日本のハイブリッド車市場がガラパゴス」とした記事に反論したことがありましたが、これまで挙げたHV車種(『』で括られているものです)は全て海外での販売を行っているまたは予定されている車種です。『アクセラ』でもマツダが海外での販売を強化すると述べているように、日本メーカーは世界市場に目を背けてHVを開発していることはありません。

そうした「ガラパゴス」とするような報道の根底には、欧州の小型ディーゼルや過給器付きエンジンの流れとHVが対立しているような構図を作ろうとする意図が感じられますが、その見方は間違っているというが私の考え方です。そうした見方は「ハイブリッド」「従来エンジン」「ディーゼルエンジン」などといった外身(ジャンル分け)にこだわり過ぎで、本当に自動車の開発の中で進行している未来への共通認識を見ていないとも感じます。

自動車の開発の中で進行している未来への共通認識というのは「電動化」であり、また実はこの「電動化」すらも外形の話で、突き詰めていくと自動車の「高効率化」という事になります。「高効率化」とは、自動車に供給されるエネルギーをいかに無駄にせず有効活用するかということです。自動車の効率はそれまで「熱」によって図られていましたが、「電動化」はそれを電気に変換するという道を増やし、より柔軟性の高い電気も使用してより全体での効率を高めるというのがいまの「電動化」の根底にあるものです。

「電動化」は必ずしも電気モーターで駆動することではありません。HVやEVがそうした分野を加速させているのは間違いないのですが、ステアリングやアクセル、ブレーキの「電動化」、エアコン等の快適装備の「電動化」などは、HVやEVだけに留まるものではなく従来エンジン車でも導入されてきています。技術の未来を見通すためには、自動車の分野分けや燃費だけではなく、こうした共通で進化している方向性を見定めることが重要かと思います。

自動車の「電動化」は日本メーカーの得意とされる分野ですが、世界の自動車メーカーもこの分野に進む方向性を明らかにしています。9月にドイツで開催されたフランクフルトショーはまさに「電動化」のショーと言っていいものでした。そこでは欧州最大の自動車メーカーであるVWのトップが「電動化」に主眼をおいたスピーチを行い、欧州も「電動化」に進んでいくという宣言を行いました。

自動車の社会的コストの低減へ

「高効率化」に加えて次世代の自動車に間違いなく求められるのは「安全装備」です。これは目新しいものでも何でも無く、自動車技術にとって最も重要な部分であり、今後も最も重要なものであり続けるであろうということです。

なぜこれらが重要かというと自動車が抱えている社会的コストが、それらによって低減されるからです。社会的コストというのは、自動車会社や自動車ユーザーに留まらず、社会に負担を与える部分をいいます。自動車の利便性や魅力がこの社会性コストを下回ると、自動車の使用そのものが許容されなくなります。大きな視点で言えば、こうした分野での技術革新の努力を自動車のメーカーが怠れば、自動車の未来はありません。

自動車の社会的コストで大きなものは、排気ガスなどによる「環境悪化」、ガソリン等の使用による「エネルギー使用」、そして交通事故による「危険性」となります。「電動化」等を使用した「高効率化」は「環境」と「エネルギー使用」を減らしこれらの社会的コストを抑えるもので、「危険性」を抑えるのが「安全装備」です。

「安全装備」については衝突防止機構等が急速に普及してきており、今後その機能は、シートベルト、エアバッグといった運転者や搭乗者を守るものから更に歩行者等を自動検知してブレーキを作動させるなど、周囲への安全も確保しようとしていこうという流れとなっています。

パッケージではなく中身を見よう

衝突防止機構等はその価値を認められており、昨今のスバルの好評価は「アイサイト」抜きには語れないでしょう。しかし上のHV、EVは外見だけで報道されるとしたように、こうした技術を次世代技術として語られるとそれが「自動運転」になってしまうことに、個人的には疑問を感じています。

「自動運転」については、その実現で最も高いハードルは技術面ではなく法制などの整備であり、技術的に対応できてもそうしたものが主流になるかは読むことは出来ません。しかし「自動運転」の開発は重要で、こうした開発から歩行者安全も含めた「安全装備」や自動車の情報通信の技術進化が生まれてきています。

「電動化」と同じく「自動運転」もそうですが、ほんとうに重要なのは外見のパッケージではなく、その中身です。特に私近的に売れる車・売れない車を見定めるのではなく、大きな技術潮流を見定める際にはこの中身の見定めが必要になります。

しかしいくら美味しい素材を使用しても、うまく見た目も作らなければ食欲をそそらないように、技術を持っていてもパッケージを綺麗に作らなければなかなか普及はしていきません。

かなりまとまりが無くなってしまいましたが、このように様々な視野を変えて見ていくことが自動車に限らず、将来の技術の報道などを見る際に重要かとは思います。