ベター・プレイス破綻とクルマの充電について

6月 20 2013

電気自動車(EV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)、つまり走行エネルギーの全部もしくは一部を充電した電池を使用して走るクルマ――プラグイン自動車の売れ行きがはかばかしくなく、これを述べる報道も増えて来ました。

ただし私の住んでいる地方都市である三島市でも、日産『リーフ』が走っているのを見るのは珍しくなく、1990年代のEVブームのように一瞬で消えていくことはなさそうな雲行きです。世界的に見ても即座に販売が激減した過去のEVブームとは少し異なり、数こそ少ないままではあるもの、一方でゼロに減ることなどもなくコンスタントな売れ行きが続いています。

とはいえ期待したほどではないとの声もあり、またその期待感によって過剰設備投資をしてしまった電池ベンチャー、EVベンチャー、充電システム機器ベンチャーの多くが倒産に追い込まれています。それでも、プラグイン自動車の今の商品力からみると販売は予想以上で、大健闘と言ってもいいのではないかというのが私の正直な感想です。 

電池交換方式のベター・プレイスの破綻

充電システム機器のベンチャーでは、専用交換ステーションで電池パックごと短時間に充電済みのパックと交換する方式を新しいビジネスモデルの提案として世界中で話題を振りまいたアメリカ西海岸のベンチャー企業「ベター・プレイス社」が、予想通りといえば予想通りで白旗を掲げ倒産しました。

日本でも六本木ヒルズにデモステーションを設置し1台のEVタクシーを運用するという報道が過去にありましたが、今はどうなっているのでしょうか?

この「ベタープレイス」のバッテリー交換方式ビジネスについては、デンマーク政府とイスラエル政府がスポンサーになり政府資金の援助を受けて両国に電池交換ステーションを設立、唯一ルノーが『Fluence.Z.E.』という専用EVを開発し販売を開始しましたが、販売台数は低迷したままでした。破綻前には創業地であるアメリカからも撤退し、親会社のあるイスラエルとビジネスを開始していたデンマークに注力するとしていましたが、この破綻によって遠くない内にこの両国のプロジェクトも幕を下ろすことは間違いないでしょう。

ベンチャー精神旺盛な人が自らの責任でそのビジネスの将来にかけてチャレンジすることは、それが失敗したとしてもそのチャレンジは称賛されるものでありそれは全く否定するつもりはありません。しかし今回のベター・プレイスもそうですが、EVに関連する破綻企業のほぼすべてが自らと民間からの資金だけで経営されてはおらず、その創業当初より多くを政府資金に依存し、加えてEVが普及する(EVを普及させる)という政府等の見通しを前提にそれをあてにして経営していたということは批判されるべきと考えています。

突き放した見方としては、実際のユーザーになるつもりもなく自分の懐を痛めるつもりもない政治家や政策担当者がエコの悪乗りで、政策目標を設置して税金を投入したとしても、「マーケット商品として、またビジネスとしてダメなものは、いくら資金を投入しても普及せず、結局は消える運命にある」という資本主義で繰り返されてきた原理に、もう一つ実証用のデータが書き加わっただけにも見えます。

プラグイン車の効果は確かにある

この電池交換方式はほぼ消え去りましたが(ただ、EVで唯一気を吐くテスラがこのブログがアップされる日にこれのデモを行うようです)、プラグイン自動車の普及には安価で安全な充電コンセントの設置が不可欠です。町で見かける『リーフ』も、私が使っている『プリウスPHV』も個人用ならば自宅の駐車スペースに充電コンセントがあり、数は少ないですが新しいマンションでは充電コンセント付駐車スペースを備えるものも増えてきているようです。

我が家では、トヨタから借りていた限定販売車ではAC100Vコンセントで充電をやっていましたが、以前のブログでご紹介したように、昨年4月のプリウスPHV量産モデル購入を機にAC200Vコンセントの増設工事をおこない今はAC200V充電です。

『プリウスPHV』の電池エネルギー量は公表スペックで4.4kWhですが、設置したメモリー付き電力計エネミエールの計測データによると電池を使い切ったあとのフル充電量が約3kWh、AC200Vの普通充電でカタログどおり約1時間半で充電完了となっています。

このフル充電でカタログ上のEV走行距離は26.4km(JC08基準)ですが、実走行の実力としては市内走行で約20㎞といったところです。今は我が家がオフィスですから、現役時代のように通勤はありませんが、現役時代を想定すると自宅から裾野の研究所まで上り勾配の約15㎞、勤務先の駐車場でも充電ができれば通勤はほとんどガソリンを使わずに済ませることができるレベルです。

アメリカ、欧州の自動車使用実態を想定すると、また日本でも通勤やショッピングの使用実態を考えるともう少し電池のエネルギー搭載量が欲しいところですが、勤務先、ショッピングセンター、出張やレジャーでの宿泊先で簡単に充電ができるようになると充電電力走行はまだまだ増やすことができます。今の使い方で、電気走行比率36%、出先での充電頻度を高めることができれば無理をせずに50%程度まであげることはそれほど困難ではないでしょう。

充電設備をつけたユーザーは次もプラグイン車を選ぶ

EVをお持ちのユーザーの方も、ほぼ100%が自宅か法人ならば会社の駐車スペースに設置されたAC100VもしくはAC200Vの普通充電を行っていると思います。通勤・ショッピングならこれで十分で、出張などの長距離ドライブで高速道路を走る機会が多いですが、一般道ではしばしば見かけるようになった『リーフ』も、高速道路、特に私がよく使う新東名等ではあまり見かけず、さらにサービスエリア、パーキングエリアの急速充電機で充電中のクルマに巡りあう事は極めて稀です。

今のEVについては、ネット上ではお試しでの長距離ドライブレポートを散見されますが、ほとんどの方が通勤・ショッピング専用車としての用途で購入されているのではないでしょうか?長距離ドライブでは従来車と使い分けておられるとすると、年間通してのガソリン消費削減量、CO2削減量がどうなっているのか興味があるところです。

冒頭に触れたようにプラグイン自動車の販売がやや伸び悩み状態にありますが、充電コンセント工事を行い、そのうえでプラグイン自動車を購入されたユーザーのプラグインに対する理解度とロイヤリティは高いと考えています。夜間電力充電を行うならば、確実に低燃費なノーマルハイブリッドよりも燃料代は安くなります。私は充電ケーブルをコンセントに差しっぱなしで使っていますが、まだまだ操作性には改善余地があるものの、接続操作自体はなれるとそれほど億劫な操作ではありません。

プラグイン車の販価が下がり、補助金頼みではなくエコカー減税程度で経済メリットが出るようになると、次には充電器の設置工事費がいらなくなりますので、クルマとしての魅力があれば、一度プラグイン車を購入した方が再びプラグイン車を購入する割合は非常に高くなるのではと思います。

もし、政府なりが本当にプラグイン車を普及促進したいと考えているのであれば、車両購入時に多額のエコカー補助金(私も45万ほどの補助金をいただいていますので言いにくいのですが)を減らしてでも、立派な固定充電ケーブル付の充電器や急速充電器への補助金だけではなく、充電コンセント工事にも補助を出したほうが普及拡大につながるのではないでしょうか?

販売開始から2年以上が経ち、ディーラー系列の中古車販売店でも中古の『リーフ』を見かけるようになってきました。ほとんどがエコカー補助金を受けて購入しているとすると、それを返上してまで手放す理由にも興味が湧きますが、その詮索を抜きにするとこの中古を買われるユーザーも充電コンセントを設置してこの『リーフ』を使いだすことになり、それだけ充電インフラは増えていきます。

私のクルマも補助金をもらっているので6年間は乗り続ける必要がありますが、まだまだこのクルマを「終の棲家」ならぬ「終のクルマ」にする気はなく、6年のしばりは永すぎるというのが今の心境です。乗ってみたい次世代THSがあらわれれば、家族にこのクルマを渡すか補助金を返上しても「終のクルマ」候補としての乗り換えを検討してみるつもりです。中古車を購入されるユーザーも新たに充電コンセントを設置するプラグインのユーザーであり、6年の縛りを短くすることが次のユーザー開拓につながり、の後押しになるのと言いたいところです。

今の電力CO2では電気自動車だからといって低CO2ともクリーンとも言えませんし、シェールオイルなど新石油資源の開発で石油資源の枯渇ももう少し先になりそうです。ただそれでも、輸入化石燃料依存からの脱却、恒常化の兆しを見せている貿易赤字の最大の原因であるエネルギー輸入額の低減の面から、電力の低CO2化が前提ですがエネルギー供給インフラとして整備されているグリッド電力をクルマの走行に使っていく方向は有力な選択肢であることには変わりはありません。

充電コンセントを持つプラグインユーザーを増やしていくことが普及へのステップです。

急速充電は必要ない

昨年、急速充電を巡って日本の「CHAdeMO」と米欧の「コンボ」の争いが紙面に踊りました。現在のところ「コンボ」軍団の勢いがなく、「コンボ」採用を宣言しているのは今年の秋頃の発売を予定するBMWのEV『i3』と間もなく発売を開始するGMの『Spark EV』に留まっており、その『Spark EV』もコンボ対応はオプションでしかも来年からの提供と規格戦争と言われた日本での報道はなんだったのかと、かなりの温度差を感じさせるほどです。CHAdeMO協議会のHPによると、6月5日時点での「CHAdeMO」急速充電器の設置台数が世界全体で2,608台、うちわけは日本1,677台、ヨーロッパ759台、アメリカ160台、その他12台となっていました。現状では「コンボ」はまだ一般利用はゼロです。しかし、これで「CHAdeMO」に勝ち目ありと勘違いしてほしくないと思っています。

電気自動車でもPHVでも、その大部分の充電は夜間電力の普通充電を使っています。もちろん今のプリウスPHVは急速充電対応ではありませんし、またわざわざ走行の途中で急速充電が欲しくなる状況もありません。EVでも、通勤、ショッピング程度の日常使用なら夜間普通充電で十分なはずで、急速充電が必要なのは予定外の行動で充電電力を使ってしまいピンチになった時のエマージェンシー充電ぐらいです。

急速充電を使う頻度もそれほど多くはないはずです。なんども急速充電のお世話になる長距離ドライブには、そもそも電気自動車を使うことは少ないでしょう。5分もあれば、ガソリン満タン、従来車で500㎞、ハイブリッドなら1,000㎞程度のロングトリップができるのに対し、30分の急速充電で100㎞程度の走行距離、くどくなりますがお試し以外の長距離ドライブに使うことはほとんどないと思います。

『リーフ』の3倍以上もの電池を搭載したテスラ社の『Model S』では、急速充電でのフル充電に1時間半以上が必要です。『Model S』は「CHAdeMO」でも「コンボ」でもない独自規格を使用していますが、こうなると「CHAdeMO」の語源の「茶でも」ではすみません。

私も過去に、こうした話は欧米でも何度も議論をしました。そうした中で、有力電力会社で「CHAdeMO」もコンボも本気で普及させていこうとの声を聞いたことはありません。ヨーロッパでの「CHAdeMO」設置が多いのも、まだ実用品ができあがっていない「コンボ」よりも、実際に急速充電の必要性を見て見るために、またその実証車として「CHAdeMO」対応がしてある『リーフ』や『i-MiEV』を使用する前提のプロジェクトが多く行われたからとも言えるのかもしれません。

このように、従来車代替を目指す電気自動車ブームは過ぎ去りそうですが、今度は手を変えたかと様に超小型EVという案もまたまた浮上してきています。こちらは超小型EVだけではなく、ママチャリ、自転車、電動アシスト自転車、原付バイク、電動クルマ椅子、シニアカー含めた軽モビリティとして、道路環境整備を含めて取り組むべきものです。

乗用車のEVが難しそうだから、次は超小型EVとの動きには抵抗を感じますが、こうした軽車両も電動化の方向であることは間違いないと思います。これもまた急速充電など必要がないのは明らかで、本当に普及させたいのであれば、AC普通充電の従来通りのコンセントプラグのままで使用できるぐらいの敷居の低さが必要でしょう。

次は非接触充電とも思いませんが、安全で安価な未来型普通充電の提案を期待しています。高速道路のSAやPAに設置するのであれば、充電が済んだのであればクルマを動かさなければならない急速充電器を設置するのであれば、有料であっても普通充電コンセントを設置したほうが、長距離トラックの休憩中のアイドル運転ストップや、保冷車の冷却用運転などの電動化対応など、稼働率の低い急速充電よりも経済メリット・エコ効果が大きいかもしれません。PHVも30分程度の「お茶でも充電」でも、高速を降りたあとの10㎞ぐらいの電気エネルギー走行分の充電はやれるとの印象です。