カーシェアのいま、これから

4月 04 2013

今回は八重樫尚史が代わりに書かせて頂きます。

昨年「カーシェアに入会しました」というタイトルで、カーシェアリングについて書かせて頂きました。その後も、「BMW ActiveEを借りてみました」という記事でも、このカーシェアサービスを利用してEVを借りた感想を書いています。その中でも触れていますが、現在でも大手3社の会員は続けており、殆ど利用する機会は無くなったのですが、日産の新型リーフ等の新機構を搭載した新車が配車されると時間を作って乗ってみたりしています。

さて、この4/1付で最大手の「タイムズプラス」が「タイムズカープラス」と少し名称を変更しました。この機会に、今日はカーシェアの現在とこれからについてとりとめなく書いていこうかと思います。

カーシェアリングのこれまで

カーシェアリングサービスは、ここ数年で急速に存在感を増して来ました。東京や大阪等の都心部では、多くの時間貸し駐車場に広告や実際の車両が置かれていますので、これまで興味の無かった方にも知られてきている状況といったところでしょうか。

カーシェアの起源というと、多くの解説ではスイス起源と説明されています。自動車の共同保有と考えると、高価だった自動車を共同保有するという概念はその登場初期からあったはずですが(後のJAF等に発展する自動車クラブは欧州では19世紀に発足しています)、カーシェアリングに類する言葉を明記してある程度多数の人にサービスを開始したのはスイス・チューリヒが最初のようです。

日本ではここ数年で急速に拡大したと書きましたがそれは他国でも同じで、一部例外を除けば、今世紀になってから急速に拡大しているという状況です。一部例外というのが、発祥国のスイスとその隣国ドイツで、これらの国ではその前からカーシェアリングサービスが行われていました。日本でもその試みが紹介され、一部で実践したケースがあるようでしたが、これまではなかなか普及が進まないというのが実状でした。

今から数年ほど前、ドイツのカーシェアサービスで話を聞く機会がありました。そこは非営利団体で、店舗に沢山の環境系のパンフレット等があったことからそういった活動と深い繋がりがあるのが伺えました。また、そこでは一定区域内では車両の乗り捨てがOKとしており、それらの回収や車両の整備などはボランティアが行なっているということで、率直に言って「これは「環境運動」であって、「ビジネス」では無いな」という印象を受けました。こうした環境運動の一環としてのカーシェアの考え方は今でもあり、カーシェアのメリットとして他の交通機関と自動車をその都度選択することによって、自動車利用の頻度を低減し、特に都市部の渋滞等を軽減でき、ひいては自動車の総量を減らせるという説明もあります。

日本やアメリカで当初、普及が進まなかったのはスイスやドイツでの非営利組織等のカーシェアがおそらくは従来のコミュニティや環境運動といったものをベースとしているからこそ成立しているもので、そのベースを持たない国では成立しにくいものだったからでしょう。一方ここ数年で急速に拡大した背景には、明確な「ビジネス」として行う事業者が表れ、「サービス商品」として認知されたという事があるのではないかと思っています。

Avisに買収されたZipcar

今年のはじめ、アメリカ最大のカーシェアサービス会社の「Zipcar」がレンタカー大手の「Avis」に5億ドルで買収されその傘下に入ることになりました。「Zipcar」はアメリカにおける商業カーシェアサービスの旗手として知られ、一時は全米の80%のシェアを持っていたとも言われています。「Avis」のライバルである「Hertz」は自社で「Hertz on Demand」を開始しており、「Avis」も同様のサービスを行なっていたのですが広義のレンタカービジネスとしてカーシェアリングを含めたサービス拡充の一環としての買収で、これはカーシェアリングが明確に「ビジネス」として認識されている証明になるかと思います。

日本でも今の大手3社を見てもその流れは明白で、「タイムズカープラス」は時間貸し駐車場大手「タイムズ24」を運営している「パーク24」が「マツダレンタカー」を買収し、引き継いだサービスになります。また「オリックスカーシェア」はその名の通り、リース大手「オリックス」の事業ですし、「カレコ」はレンタカーではありませんが大手商社「三井物産」が始めた事業が源流です。今後、日本でもカーシェアは、レンタカー市場の中で再編のキーとなっていくことがあるかもしれません。

こうした「ビジネス」としてのカーシェアが成立した理由としては、保険や法制度の整備などもあるでしょうが、情報通信技術の広がりによって、クルマを遠隔で管理できるシステムが確立したことが大きく、また予約をパソコンや特に携帯電話・スマートフォンによってリアルタイムで行うことができるようになった事が非常に大きかったと思います。

自動車会社がカーシェアに参入?

先日、日本経済新聞に「トヨタも参入、自動車大手が欧州カーシェア市場で競演」という記事が掲載されました。記事はフランス・グルノーブルにおいて、トヨタがカーシェア会社のCite Libやフランス電力公社(EDF)と共同で超小型EVの実証試験を行うという事を伝え、欧州のカーシェアリングを紹介したものです。

とはいえ、トヨタも参入としていますが、グルノーブルのプロジェクトでカーシェアリングの運営主体は本文にある通り現地のCite Libであり、トヨタは車両を提供と技術支援をするに過ぎず、この見出しは言い過ぎの様な気がします。国内の「ラクモ」で参入というトピックもありますが、こちらもあくまで運営主体はトヨタレンタカーであり、レンタカー会社は地域毎に別会社となっているので、企画や取りまとめをトヨタが行なっているに過ぎない様な気もしますが、どうでしょうか。

ドイツで各社がカーシェア事業を始めており、ダイムラーが行なっている「Car2Go」が単月で黒字化などある程度の成功を収めているのは事実ですが、私個人はカーシェアの歴史が長いドイツでは、「ビジネス」としてのカーシェアを導入するにあたって自動車会社が先導したという印象を抱いています。「Car2GO」で一定エリア以内で乗り捨てが出来るサービスを行なっているのも、上に書いた通りのドイツのカーシェアの伝統に則ったものとして行われているのでしょう。

個人的な意見ですがドイツの自動車会社も、もし傘下のカーシェアリングサービスが今後も拡大し独り立ち出来るとしたら、ある程度独立した存在として切り離すのではないかと思っています。日本でも同じで、系列のレンタカー会社を持つトヨタ、ニッサン等はそれらのサービスを展開するかもしれませんが、自動車会社が主体となってサービスを行うかは疑問があります。

というのも、以前のカーシェアリング紹介でも書きましたが、おそらくはカーシェアリングは人口密集地でなければ、稼働率の観点からビジネスとして成立しません。記事の中に「地方都市などでは「一家に一台」、または「一人で一台」クルマを保有するのが当然という意識」を変える必要性を述べていますが、その為のサービスとしてそもそも「ビジネス」としてのカーシェアリングは適当なものではないのではないでしょう。

では、都心等のみで行うサービスであるとすると、市場規模としては拡大の余地ありとしても、自動車会社が直接乗り出すもしくはそれで事業戦略を変えるという程のインパクトが有るかというと疑問です。勿論、一定の位置を確保するのであれば、それに適した車両やシステムの提供は行うでしょうし、カーシェアリングの今後のためにも自動車側のそうした対応がもっと求められるべきではあります。私自身は、そうした形で自動車会社は側面からカーシェアと連携を深めていくほうが現実的で望ましいものだと考えています。

また日本が普及が遅れているという話ですが、果たしてそうでしょうか?おそらく大手3社の会員数を合わせると20万人~30万人となっている筈です。これは、決して少ない数ではありません。また市場規模が小さいと言っていますが、海外でも市場規模はさほど大きくはありません、最大手の「Zipcar」でも昨年の売上は3億ドル弱でした。

カーシェアはEV普及を促進する?

この記事にもありますが、カーシェアとEVがセットで提供されるという実証試験は特に欧州で多く、代表も何度か触れているパリの「Autolib’」がその代表格となります。こうした中で、カーシェアリングサービス等がEVの普及を促進するという意見を見ますが、果たしてそうでしょうか。

昨年末にイギリスのRAC(日本のJAFに相当する組織)とレンタカー会社の団体「BVRLA」が、自動車レンタルビジネスの今後を検証した『Car Rental 2.0』というレポートを出しましたが、その中ではカーレンタルやカーシェアにおいてEVは「使用後の中古価格が不確定なことも含め、購入価格や維持管理費が高い」「この種の車両にとって最も稼働率の向上において、EVは充電時間の長さや充電場所の確保の必要によってそれが困難」「短い航続距離によって長距離ドライブができない」といった理由で、現時点では適していないと述べています。

私もこの意見に同意で「Autolib’」やダイムラーの「Car 2 GO」における「Smart ForTwo Electric」などの地域が限定された環境では(政府や公共団体等の援助のもと)成立し得る可能性もありますが、完全民間のビジネスとして、現時点ではEVは向いていないと考えています。日本のカーシェアサービスでも各社ともEVを一部導入していますが、EVの場合は使用後に充電のため次の予約を入れることのできない期間を入れざるを得ず、カーシェアの強みである細かな時間での予約管理ができなくなってしまっています。あくまで聞いた噂でしかありませんが、カーシェアリングサービス内で、他のガソリン車と比べてもEVの稼働率は低いものとなっているようです。

将来、EVが改良されてこれらの課題が克服されるのであれば話は変わりますが、現時点ではカーシェアがEVの普及を後押しするというは非現実的です。勿論、将来に向けた実証試験や気軽にEVを体験する機会を設けるといった活動に意義はあるかと思いますが、あくまでそれは社会実験や広報活動の一環で、「ビジネス」とは別の軸で語るべきものです。

カーシェアのこれから

長々と書いてしまいましたが、実のところを言えば、多くの方にとって今回の話はそれほど意味のある話ではなかったかもしれません。利用者側から言えば、自分にとってカーシェアが有益であれば利用すればいいだけで、必要なければ使わないという事でしかありませんからね。

今後も都心やその郊外を中心に、カーシェアは拡大していくと思います。もし、そういった場所にお住まいの方は、すぐに自分のクルマを手放すというのでは無く、一度会員になってみて利用して見ることをお勧めします。場所によって会員の属性も違い、同じライフスタイルを志向する方が多いと、会員のクルマを借りる曜日時間が重なって必要な時に借りられないということもありますので。

自分が利用した経験から語るのですが、今のカーシェアはライフスタイル等が適しているのであれば、十分に考慮の価値のあるものです。また、各社とも増車も含め、サービスの向上に努力されているので、今後さらに便利なものとなる可能性は大きいとも考えています。

ただし、ビジネスや自動車の将来の考えるという観点では、過度な期待を持つべきとは考えていません。今後はレンタカーとの境目がますます曖昧(そもそもカーシェアの定義として「レンタカーとは違い会員制」となっていますが、今のレンタカー各社は無料会員登録で割引などして実質的には会員制のようなものですし)になるのは間違いないでしょうしその分野での変動はあるでしょうが、モビリティや社会を変革するというは過大評価に過ぎると思います。上に書いたとおり、利用者は良い「サービス」であれば使うということにすぎませんから。

とはいえ、それを成し遂げるほどの「サービス」が提案され、それが持続可能なのであればそれは喜んで受け入れようとは思っています。