ハイブリッドと低燃費エンジン

3月 14 2013

日本ではハイブリッド車がトップ

昨年の年間新車販売台数のトップは1位プリウス、2位アクアとハイブリッド専用車がワンツーフィニッシュし、HV車の販売シェアが登録車(除軽)の10%を超えたのが2011年でしたが、昨年2012年はさらにその倍を超える25%に達した模様です。総販売台数も年間90万台を越え、あと一息で100万台、エコカー補助金の後押しもありましたが、バッテリー電気自動車の販売が低迷しているなか、次世代自動車として普及拡大期を迎えています。

米国、欧州では日本ほどのHVシェアではありませんが、米国、欧州ともにリーマンショックと、トヨタの品質問題、東日本大震災による日本車の供給能力不足から2011年までHV販売台数の現象から昨年はいずれも回復、HV車販売新記録を達成し、今年の飛躍が期待されています。

市販ハイブリッドのほぼ全ては「エンジン・モーター」ハイブリッド

現在市販されているハイブリッド自動車のほぼ100%が、内燃機関エンジンと電気モーターのハイブリッド自動車です。ほんのわずか油圧モーター/ポンプをもちエネルギー貯蔵源として蓄圧タンクを使う油圧方式が使われていますので、ほぼ100%と表現しました。ですからこのHVを含め、世界で販売されているクルマの99.9%までは内燃エンジン自動車です。

シェールガス/シェールオイル革命と騒がれているように、ピークオイルを過ぎたかもしれないと急激な石油資源枯渇を心配する動きもありましたが、シェールオイルに代表される非在来型と呼ばれる石油資源開発に進み、資源問題からは脱石油はトーンダウンしまだまだ内燃エンジンが自動車動力源の主役を占める見通しです。

ハイブリッド車で、エンジン・電気駆動系どちらのウエートが高いかなどの不毛な議論には意味はありません。初代プリウスの広報宣伝資料で使ったキャッチコピー、ハイブリッドの考え方はエンジンとモーターの“いいとこ取り”は今もかわらないハイブリッドの考え方を表現しています。

初代プリウスからの15年を振り返っても、確かに電池、モーター、その駆動用パワー半導体の性能向上、コスト低減は著しいものがありました。この技術進化を生かすかたちでエンジンの役割分担を見直し、その見直された分担範囲に特化した形でエンジン熱効率、出力、クリーン度の改善の合わせ技でここまでの低燃費と走行性能向上を果たしてきたとも言えます。

様々なトレードオフの組合せを見極める必要

この熱効率、出力、クリーン度の改善はいずれもトレードオフ関係にあり、すべてを睨みながら、システム全体としての最適化によりこの進化を実現させてきました。将来もこのシステム最適、トレードオフの構図は替わりないと思います。

エンジン特性への要求も、THSでは走行中に頻繁に発生するエンジン起動停止要求から、ショックの少ない起動停止、さらにエンジン停止モーター走行からエンジン走行への切り替えではエンジン始動から走行に必要なエンジンパワーを出すまで、モーター・アシストでも従来車以上に高レスポンスが要求され、ピストンなど回転部分の軽量化、吸気系のコンパクト化への取り組みがレスポンス向上に効果を上げました。また、エンジン空転時の損失低減も回生効率向上には非常に重要な要素です。

一方、低燃費の追求は熱損失を減らすことになり、冬のヒーター熱源確保のためにエンジン停止ができなくなり、これによる燃費悪化改善も重要な課題でした。2009年プリウスでは排気熱再循環システムを採用しました。さらに熱効率を高め、そのうえプラグインハイブリッドなど外部電力エネルギー走行を増やしていくと、この熱源不足が深刻な問題になっていきます。ハイブリッド用として排気、冷却水、潤滑油全体へと捨てられる熱損失全体の熱設計見直しも必要になってくるように思います。熱源確保に的を絞ったエンジン冷却系、潤滑系設計にも発想の転換が必要な時期です。

低燃費と排気クリーン度の向上もトレードオフ要素です。熱効率向上により排気バルブから出る排気温度はどんどん低くなっています。さらにエンジン停止時間頻度、エンジン起動頻度の増加はクリーン度の悪化につながりかねません。ハイブリッドでのエンジン高効率運転ではスロットル弁全開付近を使いますので直噴でのPMや過給での燃料増量による排気クリーン度悪化も将来ハイブリッド・エンジンとして注意が必要です。

従来エンジンも燃費向上してHVに肉薄している、だが価格も肉薄している。

このハイブリッド車の燃費向上に触発され、コンベ車の燃費性能も大きく向上、それを支えているのがエンジンの低燃費技術とハイブリッド技術の応用です。自動車工学の教科書にあるクルマの低燃費化のアプローチを忠実に実行したのが初代プリウスのハイブリッド開発でした。

従来エンジン車(コンベ車)の低燃費もそのアプローチは同じ、小排気量過給ダウンサイジングとエンジンの機械損失の低減が基本、そのうえエンジン燃費最適運転のためのCVT、多段変速機の採用、エンジン効率ゼロの停車中のアイドルストップも標準メニューとなってきています。さらに、走行パターンに応じて燃費、走行性能、そして排気のクリーン度を高いレベルで両立させるために、コンベ最新エンジンのほとんどでVVT-i、VTC、VTECなど様々な可変動弁機構を採用しています。

またエンジン熱効率を高めるため、高膨張比過給エンジンの採用、高圧縮比化による異常燃焼防止策として吸気系、排気系、直噴化、燃料噴射/点火時期制御など電子制御にさまざまな工夫がこらされています。EV走行機能こそ持ちませんが、ブレーキ減速時にはエンジン回転停止従来オルタネーターによる減速回生を行うシステムまで現れています。電子制御スロットル弁を使うアクセル・バイ・ワイヤも標準となってきており、コンベエンジンの低燃費も、ハイブリッドによる低燃費アプローチを追いかけてきている印象です。

ここでの留意点はコスト増です、THSではハイブリッド用電池、その電気駆動系など、以前のコンベ車と比べるとそれ相当のコストアップを招きました。このコンベの低燃費技術のそれぞれも、コスト増は免れません。アイドルストップでは、エンジン起動停止頻度の増大に対応するため、スタータ、補機バッテリーの強化が必要、パワーステアリングも油圧からモーターPSに変更が必要、小型ダウンサイジング過給もターボ/スーパーといった過給機と圧縮した空気を冷やすためのインタークーラー、直噴ならば高圧噴射系にもコスト増は免れません。もちろん変速機の多段化にもコストが必要。ハイブリッド・エンジンにも使っていますが、VVT-I, VTC,VTEといった可変動弁機構の追加にも、スロットル・バイ・ワイヤやスマートキーにもコストは必要です。

ハイブリッドもコンベも、弛まぬコスト低減を続けて居ますが、そのコスト差はかなり縮まってきており、またエネルギー回生、蓄熱空調、電動エアコンの採用などコンベのハイブリッド機能取り込みもさらに進むものと思います。

低CO2自動車を新興国へ

ここまでくると、いよいよ強力なエネルギー回生とエンジン停止モーター走行と本格ハイブリッドが欲しくなってくるものと、他社のこのところの動きを見て先行したハイブリッド屋としてにんまりしています。もちろん、ハイブリッド・エンジン担当、ハイブリッド・システム担当、電気駆動系担当のエンジニアにもさらなる知恵と汗を期待することは言うまでもありません。

世界の全てのクルマが、すぐにフルハイブリッドになるとは思っていませんが、クルマの低燃費、低カーボン、排気のクリーンと走りの両立を追求していくと、なんらかのハイブリッド機能が必要になり、そのハイブリッド機能を生かすエンジン技術進化がこれからも自動車技術進化の牽引役となるものと思います。

地球温暖化対策としての低CO2自動車へのシフトでは、日本、米国、欧州に引き続き、中国、インド、ブラジル、東南アジアといったモータリゼーション拡大が著しい新興国でのハイブリッド展開期に入ってきたように思います。この現地化もまず低燃費エンジンから、そのうえでハイブリッドとしての電気駆動系の現地化のステップが重要、この現地化を日本がリードしていって欲しいものです。