IEA WEO2012を発表

11月 29 2012

今月12日、国際エネルギー機関(IEA)が、毎年恒例のエネルギー需給の現状および将来展望とエネルギー政策への提言をまとめた『World Energy Outlook 2012年版(WEO 2012)』を発表しました。
http://www.worldenergyoutlook.org/publications/weo-2012/
レポート全体は有料ですが、このHPには日本語版のExecutive Summaryがありますのでご興味のあるかたはそれをご参照ください。

IEAは、第1次石油危機を景気に当時のアメリカ・キッシンジャー国務長官の提唱のもと、産油国がつくったOPEC(石油輸出国機構)に対抗する形で28カ国の先進石油需要国が、安定したエネルギー需給構造確立を目的に設立した国際機関です。先進国全体での石油備蓄推進、また将来エネルギー需給予測、政策提言などを行っています。

非在来型化石燃料の開発で楽観予想に

このIEA WEOは将来エネルギー予測として、先進各国のエネルギー政策策定の指針としても使用されているものです。エネルギー市場の変化や、地球環境問題などエネルギー需給を取り巻く環境変化を反映させ、エネルギー安全保障、経済発展と環境保全を掲げ、気候変動に関するエネルギー政策と市場改革が大きなテーマとなっています。IEA WEOは毎年発行されていますので、この変化を追いかけると、北米でのシェールガス・オイル開発が採掘技術の進展により急激に進み、世界のエネルギー需給バランスに大きく影響を及ぼしていることがよく理解できます。

今回のWEO2012では一時的と但し書き付きの予測ですが、2020年の初めには米国が石油生産量でサウジやロシアを抜きトップに踊りでると述べています。これは2011年までのWEOで述べていた、サウジなどOPECの生産シェアがこれからも拡大するとの予測からの大きな変化となります。2009年版のWEOで天然ガス時代の到来と述べていましたが、この天然ガスもシェールガスなど非在来型の台頭し、これに伴って非在来型石油の生産実用化が予測以上に進展したようです。

このように、天然ガス黄金期、北米での石油生産増産、非在来型石油増産により、2035年までは、省エネ、エネルギー効率向上への取り組みで中国、インドや発展途上国の需要増に対応しても需給バランスがとれるとの楽観的見方に変化しました。この将来需給に対しては、OPEC(石油輸出機構)側も中期的には楽観的シナリオに変化し、私も先月ウイーンのOPEC本部で直接話を聞く機会がありましたが、OPEC側も非在来型天然ガス、石油の資源探査、開発を進め、供給量を増やす可能性があることを示唆していたことが印象的でした。

トーンダウンする脱CO2

気候変動については、人為的影響を否定する意見もあり、IPCCでのデータ捏造のクライメートゲート事件や、このところの世界的な経済不況を受けてトーンダウンしている雰囲気もあります。

今回のWEO2012では、従来の平均大気温上昇2℃以内のブルーマップシナリオにかわり3.6℃以内を目標とする新政策シナリオを提案し、「エネルギー効率の改善により、気温上昇を2℃以内に抑える期限を少し先延ばしできる」と、口調を大幅にトーンダウンさせているのも、先進国諸国の苦しい経済情勢とはかばかしくない気候変動緩和への取り組みを考慮にいれた苦しい表現に思えます。

福島第一原発事故の影響として、日本、ドイツの脱源発、縮原発の動きも考慮に入れたようで、原発拡大が以前のシナリオに比べスローダウンするとする一方、お隣の中国、韓国、さらにインド、ロシアでは拡大すると述べています。ただし、電力需要の伸びがエネルギー全体の需要増比率の2倍と急スピードで拡大しており、原発開発を抑止しながら需要増に答えるのは一層困難になったと言っています。

気候変動対応としての2℃以内抑制はトーンダウンしましたが、エネルギー安全保障と気候変動抑制はまだまだ国際社会として取り組むべき喫緊の重要課題です。各電力会社から2011年の電力CO2排出量の報告がでてきましたが、3.11福島第一原発事故とその後の原発停止によって大幅にCO2が増加しています。この状況では、国際公約の京都議定書2012年目標の達成すら困難な状況です。

今回の総選挙では脱源発のオンパレード、しかし被災地の復興も、不況からの脱出も、さらに経済成長も、いかに節約に努めようとも、また省エネ、新エネ技術が進化しようが安心、安全、安定、安価なエネルギー供給の支えが必要不可欠です。さらに、地球温暖化緩和の取り組みも国際的にも重要な課題であることは替わりません。民主党政権として、鳩山時代の2020年25%CO2削減の目標は撤回しないことを決めたようですが、脱源発の中でどうあがいても実現はできないことは明かです。 

エネルギー政策が本物か見極めよう

IEA WEOでも日本の電力料金が、中国やアメリカに比べても、脱とはいかないまでも縮原発、天然ガスシフトの中で大幅に上昇との予測をしています。これでは、日本での製造業は成り立たず、その輸入代を稼ぐだけの貿易黒字も稼ぎ出せなったあげくのハイパー円安、インフレすら懸念されます。太陽光発電や風力発電への補助金政策であるフィード・イン・タリフも先行して取り入れたドイツ、スペインでは補助金総額の上昇で制度破綻と電力代金高騰により削減の方向で見直しされています。日本の制度もこの道をたどる可能性が高く、さらに電力料金を引き上げる要因となってしまうでしょう。

今回の総選挙では、日本のこれからを誤らないように、選挙目当ての具体策がない付け刃の脱、卒、縮原発か、経済政策、福祉政策か、政策議論をしっかり聞き、その中身を見極めて投票したいと思っています。