アメリカの電動自動車販売年間販売台数新記録

10月 25 2012

リーマン・ショック前の記録を更新

アメリカの電動車両協会(EDTA:Electric Drive Transportation Association)のHPは月明けてすぐに、前月のアメリカでの電動車両販売台数が速報として掲載されます。
http://www.electricdrive.org/index.php?ht=d/sp/i/20952/pid/20952

日本のサイトでは、自販連、自工会サイトや、補助金の申請窓口になっている次世代自動車振興センターのサイトで販売台数が公開されていますが、その速報性はEDTAとはかなりの違いがあり、アメリカの情報公開の原則とそのスピードにはいつも感激しています。

車種別の販売台数についても、民間ハイブリッド車情報サイトHybirdCARS.comに、第1週目にはハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車、さらにはクリーンディーゼル車の車種別販売台数まで速報値が掲載されています。http://hybridcars.com/frontpage

このEDTA HPでは、過去の電動車両販売動向統計ものっていますので、その推移も掴むことができ、これによると先月9月までで、リーマン・ショック後低迷していた米国での電動車両販売台数が過去最高の2007年352,274台を上回る354,040台と新記録を記録したことが示されています。プラグインハイブリッド車や電気自動車を除くノーマルハイブリッド車だけでは、少し足りませんが、まだ9月ですので通年としては大きく上回ることは確実です。

アメリカ電動自動車販売推移

グローバルな次世代環境車として世に送り出したプリウス発売15周年の節目の年に、この米国市場での電動車両販売新記録は次ぎの普及への朗報と感じています。

足踏みを余儀なくされたアメリカのハイブリッド

しかし、この経過を振り返ると、欧米での普及拡大がこの数年停滞したことが悔やまれます。アメリカでは、プリウスの発売はマイナーチェンジを行った2000年5月で、1999年に販売を開始した初代ホンダ・インサイトに先を越されましたが、それ以降トヨタ、ホンダの日本勢がアメリカ・自動車マーケットでのハイブリッド販売台数を増やし、そのピークを迎えたのが2007年の352,274台、シェア2.99%でした。ちなみに、この時のトヨタ・ハイブリッド車の販売台数は277,623台、シェアは78.8%、ホンダ・ハイブリッド車は35,980 台、シェア10.2%、これにトヨタハイブリッドシステムを搭載した日産アルティマを加えて日本勢トータルが321,991台、シェア91.4%を記録し、日本以上にハイブリッド車の販売台数が伸びていました。

これが、まずリーマン・ショックで暗転、米国の販売台数が大幅に落ち込むなかで、ハイブリッド車の販売台数も低下し、さらにこの金融危機を切掛けに2007年にかけた高騰したガソリン価格が急激に低下し、ハイブリッド車のシェアも低下していきました。

さらに、これに追い打ちをかけたのが、2009年末から燻りはじめたトヨタ車の予期せぬ加速問題です。この予期せぬ加速問題から波及して、プリウスのブレーキリコール問題がおこり、さらにこれらが切掛けでハイブリッド制御システム全体の品質問題不安に発展、トヨタばかりではなく、他社のハイブリッド車も友連れで販売台数を落とし、シェア低下を招いてしまいました。もちろん、トヨタ車の品質問題が引き起こしてしまったことですが、次世代自動車への関心が高まり、ハイブリッド車の認知度も急激に増加していただけに、これが引き金でハイブリッド車全体への不安につながってしまいました。

2011年には予期せぬ加速問題について手が打たれ、またエンジン電子制御を含むハイブリッド制御システムに対する濡れ衣も晴れましたが、2011年の東日本大震災によるサプライチェーンがずたずたになり、日本のハイブリッド車生産が大きく落ち込み、米国に自動車販売台数が回復するなか販売台数、シェアを落としてしまいました。

この間、Ford、GM、BMW、Benz、Hyundaiと日本勢以外のハイブリッド車も数多く発売されましたが、燃費性能や走行性能で強力なライバルが現れず、トヨタの台数減にともなってハイブリッド車全体の台数、シェアが低下しました。

大型ピックや大型SUVなど、燃費の悪い大型車が多く、また広大な国土から台当たり走行距離が日本の二倍にもなる自動車王国のアメリカでこそ、自動車のガソリン消費削減、CO2排出削減を目指しハイブリッド車の普及を漕いで来ました。現役時には、連邦環境保護局(EPA)、連邦エネルギー省(DOE)、加州大気資源局(CARB)や自動車技術会(SAE)などを通じBig3のエンジニアとも実用的な次世代車としてハイブリッド車普及の理解活動、試験法や規格、基準づくりの技術交流を続けてきましたので、この5年ほどの停滞は非常に残念でした。

これから本当の競争が始まる

それが、今年に入り日本勢のタマ不足が解消、品質不安も払拭され、さらにガソリン価格も4ドル/ガロン近くで高止まり、ハイブリッド車の販売台数が回復し、シェアも大きく伸びてきています。さらに、日産の新型ハイブリッド、満を持してリチウムイオン電池を搭載し投入してきたFord Fusion、欧州勢としては7速DSG(デュアルクラッチシーケンシャルトランスミッション)1モータ式のVW JETAハイブリッドなど、やっとトヨタTHS、ホンダIMAの強力なライバルが登場しそうです。ハイブリッドマーケットの活性化を大いに期待しています。

アメリカの燃費規制CAFÉの大幅な強化が決まりました。欧州も次なる厳しいCO2規制を決定しました。従来車の延長では、ディーゼル比率をもっと高めたてもクリアできません。さらに、中国を筆頭に発展途上国のモータリゼーション加速に対しても、次世代低燃費車への転換合わせて行なう必要があります。車両のダウンサイジングだけでは、乗り切れないことは明かです。小型短距離EVコミューターや大都市のEVカーシェアなど、クルマのコモディティ化、公共交通機関へのモダルシフトなど脱自動車の方向は避けられないかもしれません。しかし、個人の自由な移動手段であるモビリティの進化をめざし、脱自動車の方向ではなく、超低燃費は当たり前、その上で魅力ある新しいモビリティを作りだしていくのも、技術、そのコアに自動車の電動化、ハイブリッド技術があると信じています。

グローバルなハイブリッド車のマーケットシェアとして日本勢が90%近く、またトヨタ単独で70%近いシェアを獲得していること自体が、次世代自動車への転換との観点からは異常です。負け惜しみではなく、環境性能、クルマの基本性能としての本格的な競争の中でこそ、次世代自動車への転換が加速していくものと思っています。もちろん、この開発競争の中で、日本勢が遅れをとるようではしょうがありません。OBの目からは、日本のハイブリッドエンジニアは、競争相手が現れないぬるま湯の中で、楽をしてきたようにも感じます。目を覚まして、厳しい開発競争を勝ち抜き、そのクルマ商品として台数拡大とシェアキープを果たして欲しいもの、それが日本復活の牽引車になることを期待します。