パリのEVカーシェアプロジェクト“Autolib”のいま

10月 11 2012

今日のブログは、1年前の10月にも取り上げた、パリ市が支援し、フランスのコングロマリット「Bollore:ボロレ」グループが出資し運営を受託して昨年スタートさせたEVカーシェアプロジェクト“Autolib”のいまを取り上げてみたいと思います。
Autolib Paris : http://www.paris.fr/autolib
Bollore group : http://www.bollore.com/

Autolibはこれまでに行われた、また実施中のさまざまなEVやプラグインハイブリッドを使ったプラグイン自動車のカーシェアプロジェクトの中では、投資額、その規模が最大でその展開スピードも目を見張るものがあり、これからのEV展開として私が注目しているプロジェクトの一つです。スタートは昨年10月で、今月で丁度1年が経過しました。

AFPの報道によると、「Bollore」としての総投資額はこれまでに17億ユーロに達しており、パリおよび“パリ都市圏、イル・ド・フランス州”でのカーシェアステーションを含む充電ポイントは当初計画の6,000ヶ所に対し、本年の6月末には4,000ヶ所に到達、さらに周辺地域への拡大を進めています。

整備が進められるフランスのEV環境

私は、昨年の10月のスタート時点から、パリに出張する度にその貸し出し&充電ステーションの整備、クルマの貸し出し状況などを見て回っていますが、その進捗の速さには目を見張るものがあります。フランスでのEV車販売状況でも、本年前半期(2012年1月~6月)で全EV販売台数5,446台中トップの1,383台を記録、昨年10月以降に計画に近い水準で配車を進めていることを裏付けています。(計画2012年6月までに2,000台、当初計画3,000台)
Inside EVs: http://insideevs.com/france-electric-vehicle-sales-scorecard-through-june/

ちなみに、このデータによると、2位以下はルノーTwizy80 1,212台、3位ルノーカングー ZE 1,058台、4位にTwizy80の兄弟車で最高速度を45km/hに抑えたTwizy45の339台とルノー勢のEVが占めています。さらに余談ですが、このTwizyは日本ですでに公道試験を開始しているNissan New Mobility Conceptとほぼ同じもので、おそらくは日産のEV技術をちゃっかりとルノーが取り入れてフランスで日産よりも早く量産化をスタートさせたものと思われます。キャノピー付の4輪スクーターと云ったところですが、パリの狭い小路にあるカフェー前の狭い駐車スペースに縦に駐車している姿などは、パリにマッチしている印象です。


          
“Autolib”に話を戻しますと、10月の仮オープン直後の10月3週目にパリに行った時が最初、その時もシャンゼリゼ通りから一歩入った小路に、それまでは駐車できた路側帯に貸し出し&充電ステーションが設置されている場所を見学し、またシャンゼリゼ-通りから凱旋門を抜け、新しい官庁街で、新凱旋門と呼ばれるフランスの省庁が入っているモダンなオフィスビルなど構想ビルが建ち並ぶラ・デファンス地区に通ずる道路のそこかしこで貸し出しステーションや充電スポット工事が進められているのを見ることができました。

また、写真3のように、それまでは市が認めていた繁華街にある通常の駐車スペースをつぶし、一気に“Autolib”貸し出し&充電ステーション工事を始める強引さにもビックリさせられました。これは、現在のパリ市長ドラノエ氏の鶴の一声、パリ市内へのクルマ乗り入れに規制をかけ、駐車スペースを減らし、その替わりとして市内専用の足代わりとして計画し、ボロレグループのトップ、ボロレ氏が私財を投じてスタートさせたプロジェクトです。強引さではひけをとらない東京都の石原知事でもここまでの強引なやり方はできないでしょう。

移動手段の転換を進める欧州

“Autolib”は、同じパリ市でスタートしたパリ市営レンタサイクル”Velib”(ヴェリブ)の自動車版として、市の後押しがあってスタートさせたビジネスです。“Velib”は今では、市民の足として欠かせない乗り物となり、この”Velib”貸し出しステーションもパリ市内の至る所で見かけことができ、無人の貸し出しステーションからクレジットカードを使って簡単に会員登録をし、借り出すことができます。“Velib”の自転車は非常に重く、頑丈な作りですが、それでも破損が多いようで、市内を歩くと、その破損した自転車を集め、また一ヶ所に固まってしまった自転車を配車して回るサービストラックをよく見かけます。この運営は、スポンサー企業と会費で運営できているよう、これを倣ってストックホルム、コペンハーゲンなど欧州の様々な年でも同様の公営レンタ自転車ビジネスが花盛りとなっています。
http://paris.navi.com/special/5029791

この二匹目の「どじょう」を狙ったのが“Autolib”です。ことしに入ってもその拡大ピッチはゆるまらず、図4、5に示すように、犬も歩けばならぬ市内を歩き回れば貸し出し&充電ステーションに当たる状態になってきました。また、今回はパリ郊外にある、エネルギー関係の研究所を訪れましたが、その近くにも貸し出し&充電ステーションが設置されており、パリを含む“イル・ド・フランス州”への拡大も進み始めているようです。

ボレロ社の発表ではパリ&イル・ド・フランス州のほか、フランス各都市にも展開するとしています。またボロレ社単独として、このブルーカーの法人、個人用リースビジネスをスタートさせるとの報道があり、このリース車を使うと“Autolib”の充電ステーションが使えるとのインセンティブがあるようで、駐車場難のパリでどのようなビジネス発展があるのか注目されます。また、フランスの電力ミックスは何度もこのブログでお伝えしているように、ゼロCO2電力が90%を超えますので、台当たりのCO2削減効果も大きいことは確かです。

既に4,000台以上が配車されており、パリ市内を歩いていても時々このBlueCarを見かけるようになりました。

最近パリ市では、自動車の市内乗り入れ規制を強化し、リングと呼ばれる市内を一周する自動車専用道路(高速道路)の速度制限を70km/hに強化するほか、既に市内の速度制限強化と取り締まりの強化を行っており、規制として公共交通機関、Veribなど自転車、AutolibなどEVカーシェア等へのモダルシフトを行おうとしているようです。ロンドン、ストックホルム、ストラスブールなど欧州の様々な都市にもこのような動きが盛んになってきています。渋滞緩和、人身事故防止から止むを得ないところもありますが、移動の自由、”Freedom of Mobility“の信奉者、根っからの自動車開発屋である私としては、強制的な脱自動車へ向かわない”賢い次世代自動車“の出現を願っています。

机上の空論で語るよりも

この“Autolib”使っている電気自動車はボロレ社がイタリアのカロッツエリア ピニンファリナ社と共同開発をし、ピニンファリナ社が委託する工場で生産したBlueCar(ブルーカー)と呼ぶ、写真のような2ドアハッチバックの電気自動車です。電池は、ボロレ社内製のリチウムポリマー電池を使い、床下に搭載、走行モードは判りませんが、フル充電で250km走行レンジを持つと公表されています。

今年このBlueCarがロンドンにある「デザイン・ミュージアム」主催の「デザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞しましたが、私の目からはずんぐりむっくり、床下に大容量の電池を搭載したせいかドライビングポジションも高く、またパリ市内で使う都市内コミューターとしては大きすぎるように感じました。

EVならば、スマートForTwoEV、トヨタのeQ、またオープンすぎてセキュリティや雨風への全天候性には難がありますがTwizyのような1.5シータ-~2シータがEVカーシェアとしては合っているように思いました。使用実態としては、会員数は予定どおり増えているようですが、写真4、5に示すように、どのステーションをみても貸し出し中のクルマは少なく、稼働率は非常に低いように感じました。”Velib”ではスポンサーフィーが多く集まり、故障修理含めて運営を続けられる経営状態のようですが、高額のEVと結構立派な充電ステーション&貸し出しステーションを設置し、ほぼ自動化とはいえ、クルマと充電ステーション両方の故障、破損の修理、メンテナンスなど行い経営的に成り立つとはとても思えず、どこまで拡大していくか、デモンストレーションで終わるのか注視していくことが必要と思います。

しかし、ここまで広く充電ポイントを設置したものを有効に使わない手はありません。この充電ポイントを拠点としてプラグイン自動車普及への動きがスタートすることはまず間違いはないと思います。このパワーそのもの、またスピーディな決断は見習うべきと思います。

国内でも、軽の下のクラスの市内専用のコミューターEV規格の構想が議論されたようですが、今日紹介したパリはまだ環境整備が十分とは言えませんが、自転車専用路、人/自転車/自動車路の分離、混合交通環境での厳しい速度制限など、道路環境整備、交通規制、啓蒙活動とセットで展開されていることを忘れてはいけません。