東日本大震災から1年

3月 15 2012

東日本大震災から1年が経過しました。11日は、最初の地震が発生した14:46分、東京国立劇場で天皇皇后両陛下ご参列のもと行われた政府主催の追悼式をテレビでみながら、その前で黙祷をささげました。TVの特別番組を見、被災地の現状、当時の映像と様々なインタビュー、検証番組をみながら、この1年、そしてこれからの日本を考えながら一日を過ごしました。

この一年間、日本の、そして日本人の強さと弱さの両方を痛感する一年だったように思います。この100年間の世界で発生した地震の規模として五指に入る、地震国日本でも観測史上最大の大地震、最大震度7の大きな揺れと、この大地震が引き起こす大津波被災により、2万人に近い尊い人命を失い、避難者総数30万人を越える、広域大災害となりました。その大きな被害を受けた被災地で、迅速、整然として救難活動、被災者の方々の整然とした、またお互い助け合いながらの避難生活と復旧への取り組みには、海外からも驚きと賞賛をもって不屈の日本人パワーをたたえる声が寄せられました。また、全ての新幹線を安全に停車させるなどの防御を果たしたことも、日本の科学技術レベルの高さを示すものだったと受け止められています。

呆れるばかりの中央の迷走

しかし、この地震と大津波が引き金となった、福島原発事故とその後の対応は、それとは正反対なものでした。原発安全神話の崩壊を目の当たりにし、混迷をさらに加速させた事故後の政府、東電の迷走ぶりには、不屈の日本人パワーと対比して、政治、行政、さらに準国営巨大電力会社経営陣にプロと呼べる人材は全くいないことを露呈させました。そればかりか、被災者の目線、国民の目線、海外からの目線から大きく外れ、右往左往するばかり、あげくの果てに政局論争の足の引っ張り合いを繰り広げるなど、そちらはあきれるばかりの一年だったように思います。いまも海外との付き合いがありますが、そちらからの情報がいま振り返ってみれば、国内の政府発表や国内主要メディアからの発表よりも正確なものでした。

しかし、これは今回に始まったことではなく、くさいものには蓋、科学議論さえ封殺し、有事/リスクスタディーすらやってこなかった付けが一気に噴き出したように感じます。英雄待望論には与しませんが、少なくとも、国の将来、国民の将来、人類の将来を考えるプロフェッショナルな政治家、官僚の登場を待ちたいものです。

一方、政治屋、中央省庁のセクショナリズムに染まった一部の官僚たちから足を引っ張られながらも、住民に軸足を置く地方自治体、さらに生産/経済活動を続けなければやっていけない民間の必死の活動、さらには日本人パワーを発揮したボランティアの活動が、復興を支えてきたいように思います。TVを見ても、原発事故への対応、放射能汚染地区の除洗の遅れだけではなく、がれき処理が遅々として進んでいない様子や、復興への町作り、産業作りへの遅れなどが非常に気がかりです。

現地での復興の兆し

しかし、震災により大きくダメージを受け、サプライチェーンが寸断され生産活動の停止を余儀なくされた産業活動の回復は、産業界をあげた復興への協調路線と、その作業に携わった多くの方々の汗と叡智の結集により、世界を驚かせるスピードで進展が見られました。自動車関連では、東北、北関東地区にハイブリッド部品の生産拠点があり、ハイブリッド車制御用半導体、電池、モーターインバータ部品などさまざまな部品生産を行っていましたが、各社からの応援、専門家集団のチーム編成などその普及への努力もあり、秋口には元のペースにもどしたのも日本人パワーの結集といえます。

今年に入り、ハイブリッドOBとして、東北産業活動のシンボルとしての嬉しいニュースも入ってきました。震災の影響を大きくうけ、生産活動の停滞により落ち込んでいた家日本の経済活動に明るさが差し始め、またエコカー補助金もありますが、自動車の販売が上向き、その中でも東北の拠点で生産を開始したトヨタの新しい小型ハイブリッド車アクアがフル生産をしても追いつかないほどのお客様の支持をいただき、東北で復活生産を始めた部品とともに続々とお客様のもとに送り出しているニュースです。

今週のTVニュースにも、大津波により大きなダメージを受けた仙台港が急ピッチの復旧工事を行い、そこから続々と北米に送られるアクアの積み込み作業が取り上げられていました。発注いただいた日本のお客様に(私もその一人ですが)永い期間お待ちいただくのは申し訳ありませんが、その東北工場での組生産能力をさらに増やす作業も行われています。岩手、宮城、福島の部品工場からの部品生産もピッチが上がっています。その部品の一部はまた仙台港から欧州にも送り出され、今年の夏にフランスで生産を開始する欧州版アクアにも供給されるものと思われます。アメリカでも、欧州でも、東北復興のシンボルとして、また日本の環境次世代車として羽ばたいてくれることを祈っています。

関東自動車岩手工場(金ヶ崎市)生産
トヨタ新型ハイブリッド(HV)
アクア

経済的な復興のために現実的な行動を

人が動き、モノを作り、そのモノが動きだして、復興が、そして実態としての経済活動がスタートし、リアルの景気回復がそれを支えることになります。輸送機関、その一つであるクルマにより、人を動かし、ものを作りだすモノを運び、それにつれてお金も動き出します。その復興、景気回復へのサークルが機能を始めたように感じます。もちろん、無駄の垂れ流し、使い捨て文化ではこれからの人類が立ちゆかなくなるでしょうが、我慢、節約だけでは、人の動き、モノの動きをシュリンクさせ、被災地の復興活動にも支障をきたしてしまいかねません。

その懸念点、人を動かし、モノを作り、モノを動かし、人間活動を活発にするにはマンパワーとしての精神的なエネルギーに加え、電力、動力、熱といった実体エネルギーが必要です。安易な原発再開は許されませんが、現時点ではまだ机上の空論に留まる、太陽光、風力といった自然エネルギーに頼れないことも明かです。ハイブリッド同様、化石燃料を賢く使い、実体としての資源/エネルギーの安定供給を計ることが復興、景気回復の鍵を握ります。

与党、野党を問わず、このご時勢に政局にうつつを抜かす政治家や、自分の都合、組織の都合で動くエゴ官僚、その官僚化した巨大電力会社経営陣には早くお引き取りいただき、国の将来、国民の将来のために使命感をもって立ち上がるプロとしての政治家、プロとしての官僚、プロとしての電力会社経営者が若い世代から出現することを信じたいものです。