次世代自動車のゆくえ

1月 19 2012

増え続ける自動車

2011年の世界新車販売台数はまた世界新記録を記録したようです。8000万の大台には届かなかったようですが、リーマンショックで先進国の販売が大幅に落ち込んだ2009年を除けば近年、世界の自動車販売台数は毎年新記録更新を続けています。自動車保有台数もこれにつれて増加の一途をたどっており、統計値が確認できた2009年で9.65億台ですので、2010年には間違いなく10億台を越えていると思います。

国別では、中国が1850万台と3年連続のトップ、2位のアメリカがリーマンショックから回復基調にあり1280万台を記録しましたが、史上最高を記録した2000年の1740万台からはほど遠い状況です。日本は、大震災やタイの洪水による減産の影響が大きく、含軽で421万台と1980年代初めのレベルとなってしまいました。保有台数(2009年)では、アメリカが2.48億台とトップを維持し、日本が0.73億台と2009年までは2位をキープしていましたが、現在では中国に抜かれています。

自動車の普及率では、アメリカが人口1000人あたり809台、この数字には赤ん坊や子供まで入っていますので、成人一人一台、日本、中国はそれぞれ579台、45台(2009年統計)となっています。中国はまだ日本の10分の1以下の普及率、昨年の中国新車販売台数が13年ぶりの低い伸び率とはいえ、史上最高の1850万台を記録し、経済成長につれさらに大きく伸びていくことは間違いないでしょう。

この10億台を越える自動車の燃料として、99%がガソリン、または油の石油液体燃料を使って走っています。深海油田からの採掘、シェールガスならぬ、シェールオイルなど在来型ではない石油生産も増えていますが、この保有台数の伸びに供給が追いつかなくなることが強く懸念されています、いわゆるピークオイルの到来です。この数年は世界不況により、石油需要が頭打ちになっていますが、それでもリビア、イラク、イランなど産油国の政情不安に石油価格が敏感に反応するなど、需給バランスが非常にタイトになってきていることは確かです。景気に少しでも明るさが出ると、原油価格が跳ね上がる構造となっています。

今年の日本は何年ぶりかに寒く、豪雪が続く冬になり、これで地球温暖化?との疑問もわいてきますが、世界全体ではやはり温暖化傾向が続いているようです。温暖化ガスの主因と云われるCO2ガスの排出削減への取り組みもさらに強めることが待ったなしでしょう。

海外の次世代自動車の状況

1997年12月のハイブリッド車プリウスの発売で幕を開いた次世代環境自動車が、一昨年の三菱i-MiEV、日産LEAF、さらにはGM復活の切り札としてアメリカで発売を開始したレンジ・エステンダー・電気自動車(Extended Range Electric Vehicle :EREV)と名付けた外部充電型ハイブリッド車GM シボレー・ボルトの発売で、2011年はハイブリッド車普及拡大と電気自動車への転換への期待が高まってきました。日本では、大震災、タイの洪水の影響も大きく、新車販売台数は大きく減少してしまいましたが、新車販売台数に占める、ハイブリッド車、電気自動車の比率は着実に増加し、昨年11月には14%を越え、通年では台数こそ減少しましたが、2010年の9.7%から10.8%へと拡大したようです。また、様々な低燃費自動車の投入により、日本全体のガソリン消費量は1990年代後半から減少に転じています。まだ、ハイブリッド車など次世代自動車が石油消費の削減に大きく寄与するまでには至っていませんが、社会全体の省エネでも日本がその技術をリードしてきたように、次世代自動車の普及でも世界をリードしています。
 
しかし、目を日本以外に転ずると、不況対策、雇用対策として日本以上にこの次世代自動車開発、購入に国費が投入されているにも係わらず、またメディアがエコ自動車ブームと大きく取り上げているにも係わらず、次世代自動車の普及は遅々として進んでいない現状が明かになってきます。最近の中国のニュースで中国自動車工業会の発表として、2011年中国の電気自動車、ハイブリッド自動車の登録台数が配信されました。
http://www.chinapress.jp/consumption/28800/
それによると、中国メーカー製にはかなりの補助があるにも係わらず、1850万台中の電気自動車が5579台、ハイブリッド車が2580台、総計でも8159台と量産販売とは程遠く、これでは広報活動用とも言えない状況に愕然としました。

中国中央政府の政策としてハイブリッド車をスキップして電気自動車の実用化を優先させることを決めていましたが、昨年6月に路線バスを除き、今の電池技術では一気に電気自動車を普及させることは困難として、ハイブリッド車にも力をいれるとの政策転換を発表しました。その背景にはこの販売状況の現実があったのではと推測しています。

この中国ほどではありませんが、アメリカも同様な状況にあます。一時は原油高騰によるガソリン価格の上昇が追い風となりハイブリッド車の販売が増加しましたが、2008年秋のリーマンショック、さらにトヨタの品質問題、プリウスのブレーキリコール騒ぎなどが響き減少に転じ、また今年は東日本大震災による減産から、トヨタ、ホンダのハイブリッド車販売がさらに減少してしまいました。台数とシェアでは2007年の35万台、2.9%から、昨年の26.9万台、2.25%への減少です。

今日のニュースで、連邦運輸省(DOT)の依頼で、電子制御システム不具合と疑われたトヨタ車の暴走事故調査を行っていた米国科学アカデミーが、電子制御システムは白と発表しました。これで、連邦航空宇宙局NASAの調査に続く、白の発表です。これで暴走事故に関して大勢が決した感がありますが、この問題がトヨタだけではなくハイブリッド技術普及に水を差したのは間違いなく、非常に残念でなりません。

GM再生のシンボルとして鳴り物入りで発売を開始したボルトは、昨年の販売台数は7671台と月1000台にも達しない状態、日産リーフはこれを上回る10061台を記録していますが、前ブッシュ大統領が2007年年頭教書で述べた“アメリカ人のガソリン中毒(Gasoline addiction)”の症状は替わらず、オバマ大統領が今年の年頭教書で強調した2015年電気自動車/プラグインハイブリッド自動車100万台シナリオもこのままでは達成困難な状況です。

他は推して知るべし、欧州もこの不況とユーロ安、円高で日本車のシェアは低下、ハイブリッド車の販売も減少している状況です。電気自動車では、ルノーの小型バン“カングー”、PSAがi-MiEV のOEMである「iOn」を発売しましたが、郵便会社や公共団体フリート、さらにはEVカーシェア用などその殆どは法人用で、保有台数の大部分を占める個人の購入は少ないようです。

これからの次世代自動車の競争に向けて

石油消費の削減、自動車からのCO2排出を減らしていくには、上の図1に示す世界で使われている自動車(保有台数)を、次世代環境車に置き換えて、そのシェアを増やしていくことが必要です。次世代自動車の中では、ハイブリッド車が圧倒的シェアを持ち、これまでは世界のシェア90%以上が日本勢、その中でもトヨタ/レクサスのハイブリッド車が70%シェアを示していましたが、昨年後半から少し事情が変ってきたようです。ことし2月にアメリカで発売を開始したヒュンダイ車のソナタハイブリッドが売れ行きを伸ばしています。日本勢が大震災、タイの水害で減産を余儀なくされ、さらに円高の影響もあると思いますが、燃費性能でもスタイルでも、さらに品質でも日本勢のハイブリッドに肉薄してきています。今年1月に開催されたデトロイトでの北米モーターショーでも、さまざまなハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車の発表と展示がありました。

日本では、トヨタの小型ハイブリッド車アクアの受注が好調とか、また間もなくプリウスPHVも発売を開始します。日産からシーマハイブリッド、ホンダからはアコードPHVの発売も噂されています。加えてEVについても、各社からの発売が予告されています。日本では、震災復興需要や昨年の減産のカバー、さらにエコカー減税の継続などで、2008年以来となる500万台越えの新車販売と予測され、ハイブリッド車/電気自動車のシェアが15%~20%への拡大が期待されています。

いよいよ世界マーケットでは、本格的なハイブリッド自動車・電気自動車普及を目指す大競争時代突入の予感がします。ポスト石油、低CO2の持続可能な自動車への変換はまだこれからが本番です。これまでは、日本勢がリードしてきましたが、そう簡単にリードし続けられるほど世の中は甘くはありません。われわれは、欧米勢の背中を追いかけながら、なんとか追い抜きたいとチャレンジを続け、ハイブリッド車として結実させることができましたが僅かのリードです。

日本勢がリードを続けるためには、イノベーション技術へのチャレンジと“もの作り技術”の結集、その上で欧米勢、韓国勢に負けない戦略的かつスピーディな経営マネージに掛かっています。もちろんイノベーション技術へのチャレンジと言っても、技術屋の自己満足ではなく、環境性能の高さは当たり前として、クルマの基本性能、スタイル、商品機能では言い訳のない、またお客様に何かサプライズを与えられる時代を半歩リードするクルマを作り上げることが競争の原点です。日本マーケットが世界のパイロットとして、次世代自動車競争をリードし続けることが、次世代自動車の普及拡大を牽引することになります。今年はプリウス発売から15年目の節目の年、家電産業の二の舞にならないように、また負け馬の先走り、日本自動車産業衰退の潮目の年と云われないように、日本勢の奮闘に期待します。