東京モーターショーの印象

12月 08 2011

人出が戻った東京モーターショー

一昨日(12月6日)、東京有明ビッグサイトで開催中の東京モーターショーを見学に行ってきました。これまではメディアデーや特別公開日の説明員など、出品者側として入場していましたので、一般公開日に、入場券を買って入場するのはなんと40年ぶりでした。
2009年は、残念ながら海外出張と重なり、見学できませんでしたが、それまでの幕張会場から都心から近い有明会場となり便利になったにもかかわらず、リーマンショックの後遺症で海外メーカーは殆ど出品しなかったことも重なり、入場者数が激減し日本の将来自動車マーケット縮小が加速していくのかと心配になった記憶がありました。

今回は平日でまた雨模様の天気でしたが、会場周辺は駐車場へ入るクルマで渋滞、ゆりかもめもラッシュ時間のように混み、会場内もごった返すまではいきませんでしたが、若者からお年寄りまで、大賑わいでした。新聞報道によると、12月3日の一般公開日から5日までの入場者数は、2009年の1.5倍以上を記録し、平日の5日も2009年に比べ2倍以上に増加したそうです。この日も、混み合う状況、人気車には近づくにも時間待ちが必要、乗り込む人はさらに長時間待っている様子でした。

人気は購入候補の国内車と外国車

OBとなっても、展示車の周りに集まっている人の話に聞き耳をたて、その様子を観察する癖が抜けませんが、その観察ではプロトよりも発売間近や、話題の市販車に人気が集まっていたように感じました。次ぎの購入候補を探しに来られて、そのスペックを確認し、乗り込んで見ておられる方も多かった印象です。トヨタOBとしては、まもなく販売を開始する新型ハイブリッド車アキュアが好評のようで、正直ほっとしました。フィットハイブリッドに正対抗し、ハイブリッドマーケット拡大に競い合って欲しいものです。

トヨタ・アクア

トヨタ・アクア

盛況だった理由の一つが、2009年はほとんどの海外メーカーが出品を見送ったのに対し、今回はドイツ、フランスの欧州勢が出品したことも要因と思います。昨年10月のパリAS,今年3月のジュネーブAS、見学はできませんでしたが9月のフランクフルトMSに出品した多くのプロトおよび最新の市販車展示でそのブースは大賑わいでした。

欧州勢のプロト展示は、ジュネーブ、フランクで公開されたものの一部だけでしたが、実際にその大きさ、質感、モックだけか、実体が詰まったものか確認することがで、やはり現地、現物、現車が大切と痛感しました。この中では、フランクフルトMSのトピックスとして紹介したDaimler Smart社のEVとBMWのEVプロト i3を見ることができました。9月29日のブログではi3を含め、今回は展示がなかったVWのe-UP!含め、ドイツ3社は全て従来車の代替ではなく、コミュータEVジャンルに絞ってきたと感想を述べました。

Smart ForTwo Electric

Smart ForTwo Electric

BMW i3

BMW i3

確かに、DaimlerのSmart-ForTwo-Electric-Driveはベース車そのまま実用に近いコミュータEVでしたが、BMW i3は予想以上に大きなサイズのコンパクトクラスのクルマでした。 
カーボンファイバー製ボディーの量産工場を準備しているとの報道もありますが、都市のチョイ乗り車としてどれくらいの価格をつけ、BMWとしてこのクルマをどのように位置づけるつもりなのか興味津々です。

日本マーケットがさらにシュリンクすると、2009年のように、海外勢の東京MSスキップが常態化するのではと心配していました。しかし、今回盛況であったこと、世界に先駆けて若者の自動車離れが進行している日本でも、自動車MSにこれだけの人を集め、自動車に対する熱気と次の自動車に対する期待感を感じたことは嬉しい予想外でした。

次世代自動車でのサプライズは無し

しかし、入場者の熱気、次ぎのクルマへの期待感の高さを感じた一方、次世代自動車の方向性を示すメッセージ性のあるクルマ、またサプライズを与えてくれたクルマは日本勢だけではなく、欧州勢含め正直いってありませんでした。

いずれも想定内、それも期待値の範囲、ビジョン、戦略を打ち出しているはずのコンセプト車ブース、ビジョン発信のセンターブースも、エコ/エコの大合唱、今はやりのスマートグリッド・スマートハウス、緊急給電のV to Gを売りにするか、ノスタルジックなスポーツカー、相も変わらず大排気量ビッグパワーセダン、SUV、ミニバンのオンパレード、カタログ燃費値の高さを謳うエコのクルマと、その対極として若者に対してというよりはクルマにとって良き時代を過ごした高所得中高年向けにエモーショナルなFun to Driveを謳うクルマの二極化の印象を受けたのは私だけではなかったようです。

確かに、今回の東京だけではなく、パリでもジュネーブでも、エコを謳うクルマ以上に多く人を集めていたのは、このようなクルマであったことは事実です。声高にエコを叫び続けることに、すこし飽きとうっとうしさを感ずるようになってきているのではと感ずるのはクルマ屋OBの過剰反応でしょうか?

低燃費高効率、エコ、クリーンは、これからのクルマとしては当たり前、ガソリンの臭いのするクルマや少しでも白煙、黒煙が出るクルマは論外、その上でカントリー路、山岳路などでクルマを走らせる快感を感ずるクルマ、長距離ドライブにも安全にストレスなく出かけられるクルマが目指す方向だと今も頑固に思い続けています。

エコと走りの両立を目指そう

初代プリウスは、21世紀として目指すべきクルマの基本性能として、エコ性能でのサプライズを目指しました。それからの15年間は、エコ性能をさらに高めながら、クルマの走行性能として世界中のさまざまな走行環境の中で、安全、安心に走れるくるまに成長してきたと思います。しかし、ここで述べた低燃費・クリーンの高いレベルのエコ性能を持ちながら、私を含めて(少しノスタルジックな走りへの想いは入りますが)時には右脳でのドライビングを楽しませてくれるクルマの実現が夢でしたが、現役時代にはそのチャレンジにまでは手を広げられませんでした。2極化ではなく、エコと走り、そして走行安全の高いレベルの融合にこれからも日本のクルマ屋としてチャレンジし続けて欲しいところです。

何度か、このブログでも述べてきましたが、自動車のこれからの進化を日本勢がリードしていくには、やはり自国マーケットが活性化し、激しくフェアな開発競争を行い、その刺激で切磋琢磨していくこと、それをしっかりとユーザーに発信してくれるドメスメディアのサポートが必要です。この15年、少子化、若者のクルマ離れ、不景気と日本の自動車マーケットは右肩下がりで縮小するばかりでした。

マイコンエンジン制御、4バルブエンジン、過給エンジン、トラクションコントロール、VVT-i(可変バルブタイミング)など、私が開発を担当した技術、新エンジンはいつもクリーンと高効率、高出力性能の両立を目指したつもりです。その全ての新技術、新エンジンをまずは日本向けのクルマに採用し、その上で、改良を加えて、海外車両に拡大してきました。

初代ハイブリッドプリウスも1997年12月の販売は日本向け、日本のお客様に育てていただいて、その経験をフィードバックし2000年に大改良を行い、同時に欧米導入を図り、お客様に信頼していただき今の普及拡大に繋がったと確信しています。2極化ではない次世代モビリティも日本勢が、日本マーケットから発進・発信し、世界へ拡大していってくれることを熱望しています。