プラグインプリウス日記-3
プラグイン自動車と充電インフラ

プラグインプリウスを使いだしてから、3カ月が経過しました。私の住む場所は静岡県ですが、富士川の東側の東京電力エリアに住んでいますので、この時節、日中ピーク時間帯の充電は気にしながら、プラグインドライブを続けています。中部電力エリアでも、浜岡原発の稼働停止で、東京電力エリア同様か、場合によってはそれよりも発電余力がタイトになっていますが、とはいえ電気自動車含めたプラグイン自動車の台数は極少数で、日中に充電してもその影響はわずかでしょうが、できるだけ、夜間充電を心掛けています。

スマート・グリッドへの第一歩

今日の新聞に出ていましたが、日本も遅ればせながら家庭や小規模オフィスにも電力メータに情報通信機能をもち、電気使用状況を伝えたり、電気機器のスイッチOn/Offを外部から行ったりできるスマートメーターの普及を前倒しで行うとの政府見解が出されたようです。

これはプラグイン自動車にとっても朗報で、このスマートメーターがネットワークとつながることで、リモートで電池充電状態のモニターや、夜間充電、ピーク時の充電カットなど充電制御、さらに充電量や充電効率の把握、電費、燃費、CO2排出量の見える化、電池を含めた故障診断、メンテ情報などを、スマートフォンやPCで行うことが簡単にやれるようになるでしょう。

スマート・グリッドのスタートはここから、これに家庭、小規模オフィス用太陽光発電、もしくは定置型小型燃料電池エネファームを接続するとスマート・マイクロ・グリッドが構築できます。プラグイン自動車の一時的な電力貯蔵源として使い、ピーク時にはその電力をグリッド側に流す、Vehicle to Grid (VTG: クルマから電力グリッド)がスマート・グリッドと大風呂敷が拡げられていますが、それはまだまだ先の話、ピーク時の充電カットぐらいのスタートでも十分ではないでしょうか?

安い電力料金時間帯での充電など、ピークカットのきめ細かい制御がやれるようになり、電力料金にそのインセンティブをつけることにより、我慢の節電ではなく、スマートに電力消費を抑えることができます。

充電ポイントは主に自宅

電気自動車でも、プラグインハイブリッドでも大部分の充電は、自家用車ならば自宅もしくは会社の固定駐車スペースに駐車中の夜間に行うことになることは明らかです。電気自動車でもタクシーや稼働率の高い営業用社有車以外はほとんどの通勤、ショッピングなどの日常使用では、この夜間充電でまかなうことができ、日中の充電が必要になるのは長距離ドライブぐらいでしょう。
プラグインプリウスの3カ月の使用体験でも、3カ月間に外出先で充電したのはたった1回だけ、残りはすべて自宅ガレージのコンセントからの充電でした。その1回は、充電ポイントの所在を調べ、たまたま目的地に事前予約が不要でコンセントが設置されている公共駐車場があったのでそれを使うことができましたが、結構高価な充電ケーブルを通常のコンセントに差しっぱなしでクルマを離れることには盗まれるのではと心配をしました。

豊田市への出張時にも、充電ステーションの所在を探し、豊田市が設置している立派な充電ステーションが見つかりましたが、これも事前予約が必要で、さらに市のプラグイン車を止め充電している夕方から朝までは使えないなど、ビジターが使えるようにはなっていませんでした。また、京都出張時のホテルにも充電できることを売りにしていたホテルがありましたが、充電が終わったら通常駐車場に移動させる条件がついていましたので、京都の夜の食事とビールを優先、ホテルでの充電はあきらめました。

豊田市駅前の充電ステーション

写真1 豊田市駅前の充電ステーション
(朝7時 充電拠点にしているクルマで満車)

プラグインプリウス70台を使った、フランス、ストラスブールでの実際のリースユーザを募って実施中のデモテストの結果でも、充電回数の95%が自宅とオフィス駐車場の充電コンセントを使用しており、中心街のロードサイドや、公共駐車場に設置した充電ポイントではわずか5%しか使われていないとの結果でした。この5月もストラスブール出張の機会にロードサイドの充電ポイントや旧市街の中心にある公共地下駐車場の充電ポイントの何か所かを見て回りましたが、充電中のプラグイン車を見かけることはありませんでした。

ストラスブール 自宅ガレージ用充電ポイント

写真2 ストラスブール
自宅ガレージ用充電ポイント
(写真はフランス電力提供)

ストラスブール 路肩駐車スペース充電ポイント

写真3 ストラスブール
路肩駐車スペース充電ポイント
(写真はフランス電力提供)

日本でも、最近急速充電ステーションが設置されている高速道路のサービスエリアが増えてきましたが、比較的高頻度で高速道路を使う私でも、ストラスブール同様、充電ステーションを使っているクルマを見かけたことはありません。経産省が発表した、次世代自動車戦略2010をしっかり読むと、2020年の充電インフラとしては自宅、会社、勤務先駐車場など普通充電ポイント200万か所に対し、急速充電ステーションは5000箇所と、限定して用途でしか使われないとみているようです。

まずは普及のために家庭と職場に安価に充電スポットを

充電ポイントの設置費用も、プラグイン自動車普及のためには欠かせない費用であり、クルマの固定駐車場所には必ず1台、できれば勤務先の駐車場には勤務中に充電できる充電ポイントが欲しいところで、さらにマイクロ・スマート・グリッド、スマートメーターへの対応費用など考えると、次世代自動車戦略シナリオや、各国のEV/PHV普及シナリオを実現し、脱石油燃料へのソフトランディングと地球温暖化緩和に貢献していくためには、プラグイン自動車だけではなく、この充電ポイントコストも含めたドラスティクなコスト低減欠かせません。

最近のニュースでも、EV/PHV普及シナリオや、これに対応する充電インフラ整備議論も、これまでのEVブームに乗せられた“いけいけどんどん”基調から、その費用負担、経済性、マーケット原理を踏まえた現実シナリオが議論されるようになってきた印象を受けます。
イギリスでは、以前に決定していた2013年までに公共充電ステーションを9000基設置するとの計画を白紙撤回、「プラグイン自動車の充電はほとんどが家庭、もしくは仕事場」として「使いやすさと経済的透明さ」重視して政策を進めていくとこの撤回理由を説明しています。
http://www.dft.gov.uk/publications/plug-in-vehicle-infrastructure-strategy
(イギリス運輸省)

最後に、プラグインハイブリッドの宣伝をさせてもらいますが、電池が空でも、ガソリンで普通のクルマ、普通のハイブリッドと同等以上に走れるデュアル燃料車であることが特徴、ガソリンを使う分少し割高になりますが、クルマを使ううえではほとんど気にする必要はありません。プラグインハイブリッドも自宅、官庁車や社有車ならその固定駐車スペースとできれば仕事場の駐車場での充電が欲しいところです。その充電設備だけではなく、クルマとしての「使いやすさと経済的透明さ」を普及の条件とすると、まだまだそのハードルは高いですが、一層の開発努力とビジネス成立の知恵を絞り克服していくことを期待しています。