スマートグリッド展

現在東京ビッグサイトで開催中のスマートグリッド展を訪れましたので、今回はその話題について、つらつらと書いてみます。
なお、基本的に撮影は禁止とのことで、写真等はありませんのでご了承ください

まずは、会場に入って、基本的にはBtoBである配電等の電力インフラ系の展示会なのに、かなりの入場者があることに驚きました。私が訪れた二日目の数字はまだ出ていませんが、初日の来場者は12,712名だったそうです。東京ビッグサイトの1/3~1/4のスペースでの開催とするとこれはなかなかの数字です。

展示物の多くは、BEMS(Building Energy Management System)やHEMS(Home Energy Management System)に関わるもので、特にその産業分野を生業にしていなく「スマートグリッド」が標榜している新しい産業の芽を確認するために訪れた僕の目では、目新しい内容は特に見つけることは出来なかったような気がします。

BEMS:ビルや工場のエネルギー消費(主に電力)を管理するシステム。

技術の流れでは確かにスマートグリッドはBEMSの延長線上に位置づけられるもの(通信のイメージで行くと、BEMSがLANに相当し、スマートグリッドがWAN≠インターネットに相当する)ですので、スマートグリッド技術の展示会というのも納得できないことはないのですが、やはりすんなりと腑に落ちない部分もありました。

スマートコミュニティ?

また、これは共催である(独)新エネルギー・産業技術開発機構のブースなどで多用されていた「スマートコミュニティ」という言葉にも、個人的には苦笑いを抑えることが出来ません。(ここ数日、経済紙などでこの言葉が出る機会が多いのはこのイベントとのからみでしょうね)

正直、「スマートグリッド」という言葉も電気、自動車、通信などの複数の産業分野がクロスオーバーする技術分野についてネットをかけて一纏めにするための、その言葉単体では殆ど意味を持たない(実際には多くの技術を紐付けする接点でしかない)言葉であるのに、そこから更に新しい「スマートコミュニティ」なる言葉を作って説明していることには、寒々しい印象すら受けました。

僕は、電力の有効活用の為の「スマートグリッド」技術の早期導入や、「スマートコミュニティ」が標榜する低炭素社会への道筋を歩む必要性については積極的賛成の立場にいます。しかし、僕は「スマートコミュニティ」などの言葉には大きな疑問をいだいています。というのも、これらの言葉は現実の意味性を希薄化させて、消極的賛成を賛成として扱う為のロジックとして機能し、それは現実にスマートコミュニティ協賛企業の多さとして現れているのですが、このような意見調整法は、将来にはマイナスに働く危険性の方が大きいと僕は考えているからです。

以前、僕は「スマートグリッド」が日本で進まない理由に、自動車会社や電力会社、そして政府が互いに費用の負担を押し付け合いしているのではないかという疑念をこのブログで書きました。どの業界・政府も「スマートグリッド」の方向性については、表立って反対という立場を持っている訳ではありません。それなのに普及が進まないのは、産業の現実の前に大義名分の賛成よりも消極性の方が強く出ているからです。

僕が先に書いた「現実の意味性の希薄化」というのはそういう意味で、ビジネスの現場で最大の「現実」は「コスト≠リスク」です。そして、それは回りまわって、最終的には「消費者」にその効用を説明し負担を納得して貰うことにつながっていきます。普及で最も労力が必要で努力をしなければならないのは、その「現実」と向きあうことで、僕は「スマートグリッド」の普及は技術的にはそのフェイズに、かなり前から入っていると感じているのですが、「スマートコミュニティ」など枠を拡げてしまって、その部分への努力の結晶が見えなかったのには残念でした。(一応付け加えておくと、BEMS等の既存技術はその枠内ではビジネスとしての「現実」と向きあっています。ただし「スマートコミュニティ」などの政策がそれの拡大に効用があるように思えないということです。)