「PHVに未来あり」

今週のタイトルは私がつけたものではありません。
先週ご紹介した、フランス、ストラスブールでのプラグイン・プリウス大規模実証走行プロジェクト、通称クレベールプロジェクトの開始1周年の成果報告会とユーザーミィーティングをとりあげた、アルザス地方紙記事のタイトルです。フランスでは、プラグイン・ハイブリッドは、充電可能ハイブリッドという意味の“hybride Rechrgenable”とも呼ばれています。

DNA 05/09/2011

DNA 05/09/2011

記事は、実証試験に参加したユーザーの声とトヨタ、EDFの代表者のスピーチなどをまとめたものとなっています。そこでは94%のユーザーがその燃費に満足し、93%の方が従来よりも環境を配慮したドライブ・マナーを心がけるようになったというEDFが行ったユーザーのアンケート調査結果が紹介され、これを受けてこのプロジェクトの強力な支援者ローラン・リース ストラスブール市長が「(時速制限)地帯『Zone 30』の拡張計画に正に適したドライブ・マナーがもたらされた」というコメントが記載されています。

この『Zone30』とは、以前のブログでもとりあげましたが、ストラスブール市が提案している、高速道路との連絡路を除く市内中心地区内全域の最高速度を30km/hに制限にする市条例のことで、現在議会で審議中です。先週も紹介しましたが、クルマの市内中心地区への乗り入れ制限の動きは、歩行者、自転車との混合交通の安全確保、自動車から排出される浮遊粉塵や窒素酸化物の削減など都市大気のクリーン化、さらには自動車やバイクによる騒音防止、都市内渋滞対策として欧州各都市で拡大しようとしています。

しかし、欧州社会に根付いている自由な移動手段としての個人用モビリティを抑制しようとの考え方は少なく、エネルギー資源、環境保全を進めたうえで、公共交通機関、自転車、歩行者と共存できるモビリティを求めていこうとの姿勢に共感を覚えます。歩行者、自転車、トラム、バスや都市内用コミューターEV、電動スクーターと共存できる個人用モビリティとしてプラグインが評価され、認知度が高まってきたことに、自動車屋として手応えを感じ始めています。

プラグイン・プリウスの燃費経過

4月末に納車された、わが社のプラグイン・プリウスも海外出張中の6日間は車庫でお休みしていましたが、この日曜日の第1回目の給油を行いました。連休中に2回の長距離ドライブを含め、走行距離978kmに対し、29.3Lの給油、その間の充電電力は58kWh,この電気エネルギーを使って燃費はクルマの表示では35.0km/L、満タン法では33.4km/Lを記録しました。この数字を見て、わたし自身も、実際にプラグイン・プリウスを使うなかで、「PHVに未来あり」との思いを強めています。

少々充電効率は悪いような感じがしますが、充電した電力量に応じて、ガソリン消費が確実に減らすことができ、高速道路以外の郊外や都市内の一般道路では、ほとんどエンジンをかけず、モータだけで走行することができます。一般路の走行で走り方と道路勾配などにより、エアコン負荷も少ない今の時期でEV走行距離は15km~27kmと大きくばらつき、印象としては日当たり一回の充電だけで通勤やショッピングなど日常のトリップをカバーするには少し足りず、通勤先での追加充電など、日当たり2回ならば結構カバーできるユーザー層が多いのではと思います。
日当たり1回の充電、それを夜間電力で行うことが当面の平均的な使い方、日本での、欧州でも、もう少しEV航続距離が欲しいところです。

今週、片道250kmの長距離日帰り出張にでかけましたが、前夜電池充電を忘れ、そのままの状態で出発しましたが、もちろん普通のプリウスとして、往復500km、出張先には充電コンセントがありませんでしたので、帰りも普通のプリウス、往復の燃費は、それほどのエコ運転は行いませんでしたが、表示燃費は25.5km/L、エコタイヤのせいもあるかも知れませんが、車両重量は180kg近く重いにも関わらず、私の乗っていた3代目プリウスよりはかなり良く、エネルギー容量が大きく、また回生受け入れパワーも大きなリチウム電池を搭載した効果もこのような高速燃費にも現れているように感じました。

超えるべき課題はあるが……

もちろん、EV航続距離を伸ばし、家庭の深夜電力充電だけではなく、ピーク時以外の日中充電頻度を高くできれば、さらにEV走行比率が高まり、ガソリン消費削減効果が大きくなりますが、充電インフラの費用負担をどのようにするかも、EV含めたプラグイン自動車普及への課題です。

プラグイン自動車用充電スポットをどのように設置できるかが、PHVのみならず、EV普及には販価アップ以外の最大の課題です。日本でも、新しいマンションには充電用コンセント設置を売りにするところも出てきましたが、標準装備にはまだまだ先、その費用負担をどうするかの問題も解決していく必要があります。地方では、移動の足として1家族複数台保有が多く、そのほとんどが屋外駐車スペース、そこの充電ポイント設置、さらに欧州都市では、古い集合住宅も多く、許可はもらっているようですが、路上駐車はあたりまえ、一軒家でも独立した車庫があるのは裕福なほんの一部の家庭だけ、ほとんどは屋外駐車で、EV/PHV用の充電スポットをどのように設置するのか、安全チェック、メンテナンスをどう進めるのか、さらにその費用負担をどうしていくのかも大きな課題です。

屋外駐車が多いだけに、今回のプラグイン・プリウスでの使い勝手の悪い、重いケーブル、照明のないプラグ差し込み口、ロックのない充電ケーブルには、すでに強い改善要望が出されています。

さらに、今回の原発事故問題に端を発して、自動車走行用エネルギーとしては、新規需要となる電力の安定供給、さらにその低CO2化など、日本ではその先行きが混沌としてきています。しかしグローバルには、ポスト石油、低カーボン化として自動車のプラグイン化が大きなうねりとして動きだそうとしています。

「PHVに未来あり」、さまざまな課題を、知恵を結集し、また日本のもの作りパワーを発揮してその解決策を見つけ出し、この未来を日本人の手で引き寄せてくれると期待しています。