プラグイン・プリウスの納車

5月 05 2011

プラグインを実際に使用しはじめました

古巣であるトヨタ自動車に、リース貸与をお願いしていたプラグイン・プリウスが先月末に納車され、会社の足として使い出し出しました。このクルマは、トヨタ自動車が広報用に使っていたクルマということですので、もしかしたら正月の箱根駅伝でも使われたものかもしれません。プラグインハイブリッドは現役時代にも注目しており、トヨタ最後の仕事としてプロジェクト立ち上げにも付き合いましたので、「ハイブリッドの父」とも呼ばれることもある私としては、その出来映えをシビアに見極めてやりたいとの思いもあり、貸与をお願いしました。

プラグイン・プリウス

プラグイン・プリウス  5月4日撮影
(受け取り後走行距離 797.4km
表示燃費 30.4km/L
累積充電量30.81kWh )

車庫の充電用コンセント工事では、エネミエールという充電電力量や、時間、日、月ごとの使用電力量をメモリーに記憶ができる電力計を設置しましたので、毎日の充電経過を計測しながら、プラグインハイブリッドの低燃費、低CO2効果、さらにその将来性を確かめて行くつもりです。この様子はこれからも折にふれて、紹介していきたいと思います。

エネミエール

パナソニック製エネミエール表示画面
(5月2日の日当たり充電量 7.26kWh)

充電の必要をなくしたプリウス

自動車は、ポスト石油、地球環境問題などから、ドラスティックなチェンジが求められおり、ハイブリッド・プリウスはその口火を切るとの強い意志をもってまた、エネルギー・環境に対応するチェンジの第一歩として送り出しました。

人間進化の原点が、未知な物、未知な土地への「チャレンジ」と「ムーヴ=移動」にあったように感じています。20世紀に生み出され普及した自動車は単なる移動手段としてだけではなく、人間の「チャレンジ」「ムーヴ」を体現するものでした。ハイブリッド車プリウスも「チャレンジ」と「ムーヴ」への喜びを与えられるクルマとして開発したつもりです。

この自動車のチェンジの時代、現役の開発の一線からは身を引きましたが、未来の自動車も「チャレンジ」と「ムーヴ」への喜びを与えるクルマであって欲しいと思い、今も将来自動車とそれを支える日本のもの作り技術の発展をサポートするアドバイザーを続けています。

このブログでも何度も述べていますが、そのコア技術が自動車の電動化であり、ハイブリッド技術であることは論をまたないでしょう。

初代プリウスの広報では、漫画家手塚治虫先生のアニメキャラクタのアトムやお茶の水博士などを使い、「このクルマは電気自動車のような充電はいりません」とのコマーシャルを流しました。電気自動車は当然として、それまでのハイブリッドは電気自動車の欠点である、フル充電あたりの走行距離が短いことを克服するため、その電池を充電するための発電用エンジンと発電機をもった、GM VOLTが説明している走行レンジを延長させる(Range Extender)タイプのハイブリッドが主流でした。

トヨタは電気自動車の延長、欠点を補うものではなく、自動車の「チャレンジ」と「ムーヴ」を与えられるものとして、エンジンと電気をうまく混合して使い、クルマの走る喜びと低燃費、低CO2の両立をめざし、今に続く、トヨタハイブリッドシステムの実用化に取り組みました。エンジンを搭載しても、電気自動車に負けないクリーン性能をめざし、その実力がカリフォルニア州の環境当局(CARB)にも認められAT-PZEV(Advanced Technology Partial Zero Emission Vehicle:先進技術PZEV)という難しい名前のカテゴリーが新設され、2003年にHONDA Civic Hybridとともに2代目プリウスがAT-PZEVとして認定されました。

こうして、外部充電のいらない低燃費自動車として誕生したプリウスでしたが、米国での販売開始の前後から、ZEV規制を決め、その普及を進めたいCARBや、そのZEV規制をサポートしていたアメリカの電力中央研究所(EPRI)のメンバーが、このプリウスに注目し、このプリウスに搭載したハイブリッド電池の容量を拡大し、外部電力で充電するプラグイン自動車をやらないかとの問いかけが何度もありました。

しかし、電気自動車ZEVが電池の実力ばかりではなく、充電操作性、充電設備の設置コスト、充電インフラの未整備など、実用化のハードルが非常に高いく、またユーザにイメージも悪いことから、前にのべた「充電のいらないハイブリッド」を特徴としましたし、また今も採用している安全性と耐久性に優れるニッケル水素(Ni-MH)電池では、電池容量を増やすと、重量、容量からもラゲッジ容積(トランクルーム容積)や室内スペースを損なうことになるため、電池の軽量化とコンパクト化が期待できるリチウム電池の安全性と寿命が改善され、またその低コストが見込めるようになったら、プラグインも考えたいとお答えしていたことを覚えています。

危うさを抱えたプラグイン化改造の流行

その後、アメリカで販売したプリウスを、追加でトランクルーム一杯にリチウム電池を搭載してプラグイン・プリウスに改造するベンチャー企業が次々と現れ、それが契機となりアメリカ政府やカリフォルニア州をも巻き込んだプラグインハイブリッド待望論が過熱化し、さらにこれが引き金になり電気自動車リバイバルの動きにもつながって来ました。

当時でも、量産自動車用にリチウム電池を使うには、克服すべき多くの課題があると認識しており、勝手な改造といえども、その改造プラグイン車の安全性に心配をしていました。心配していた通り、改造電池パックが原因で燃えてしまったクルマもあったようです。また、パソコンや携帯電話の電池パック発火事故や過熱が問題になったのもこの頃です。パソコン出火の状況は、You-Tubeでも流れていましたので、ご覧になった方もおられるでしょうが、出火というよりも火の手が数メータの高さにもあがる爆発といった映像でした。

プリウスの開発でも、電池起因の発火とそれが起因の車両火災に対しては、念には念、安全設計、フェールセーフ設計、故障分析には万全を尽くしましたし、ニッケル水素電池に決めたのも、リチウム電池に比べ安全性に優れ、長寿命であることがポイントでした。

リチウム電池もその後、発火事故防止、安全対策としては様々な改良が行われ、自動車用にも使える見通しが付いてきたようですが、自動車でパソコン出火のような事故が起ることは決して起してはいけません。万全の安全性、フェールセーフ、エマージェンシー性能が保証し、自動車用として採用できるようになった筈です。こうして、プラグイン・ハイブリッド実用化に向けて走り出した第1歩がこの少量限定生産の実証用プラグイン・プリウスです。

プラグイン・プリウスのクルマとしての「チャレンジ」と「ムーヴ」実現度についての感想と、燃費、CO2削減ポテンシャルは、もう少し走り込んでから、またきちっとしたデータをとってからお伝えしたいと思いますが、使い始めた最初の印象は、どれも想定内、次世代自動車としてのサプライズはなかったのが開発陣の「チャレンジ」不足の印象でした。

まずは、軽い愚痴を少々

しかし想定内ではありますが、電池切れを心配せず、充電電池を使い切ったあとも普通のプリウスとして低燃費で走り続けられるプラグイン・プリウスの良さを感ずることができました。されど、重く持ちにくい充電ケーブルを持ち歩き充電するいまの充電方式には、プリウスに限ったことではありませんがはやくもうんざりしています。